「三世代同居は得ばかり」と断言できないワケ 両親と同居する前に知りたい3つのリスク

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パートナーと離婚した後に3世帯同居し始めた人も気をつけてほしい。児童扶養手当は年収160万円までのひとり親世帯には、毎月最大4万2500円(子1人の場合)が支給される。だが同居すると、祖父母の収入が合算されるため、支給停止にされる可能性もある。

デメリット2 精神面での負担増加

これは、私の知人の話である。シングルマザーの小川りさ(20歳・仮名)さん。彼女は2人目の子どもが生まれてすぐ、50歳の祖母の家に引っ越した。彼女も祖母も働いており、保育園に助けられながら子どもたちの面倒を見ていた。

しかし、こうした生活を続けていくうちに、夜中に泣きじゃくる赤ちゃんとわんぱくすぎる3歳の息子に2人ともヘトヘトになった。そのうち祖母は「母乳が出ないのは仕事しすぎ。離乳食も料理も下手。これだから夫に逃げられるのよ!」などと暴言を吐くようになり、「男の子はたたかなきゃわからない」と息子にも手を上げるようになった。

祖母が孫に対して暴力を振るうケースは決して珍しくない。2017年には、愛知県では55歳の若い祖母が、3歳の孫娘の首にコードを巻きつけて絞殺しようとした事件もある。また、インターネットで「孫 虐待」と検索すると、祖父母の孫に対する暴力についての相談も多く表示される。

家族といえども教育方針の違いや、世代間ギャップが大きいゆえに、こうしたトラブルが起きるのかもしれない。

もし祖父母が倒れたらどうする?

デメリット3 育児と介護のダブルケア

私が以前取材した澤田玲子(40歳・仮名)さんは、子育てのためにわざわざ夫の母親を頼って北海道に移り住んだが、1年後、義母が育児疲れのため脳梗塞で倒れた。受け入れ施設もないため、彼女は仕事を辞めて育児と介護をすることになった。

「私の実家ではないから、友達もいない。2歳の娘の面倒だけでも大変なのに、介護までしなければならなくなった。仕事を辞めたから保育園も追い出された。でも、祖母は孫のために一生懸命助けようとしてくれたから、責任も感じ関東に簡単に戻れなくなった」と、彼女は悲痛そうに語る。

昔と比べて、子育てをとりまく家族形態の背景が大きく変化している。そんな中、時間的、金銭的余裕など背景が違うのに、単純に祖父母との同居・近居を誰にでもすすめられるものではない。

3世帯同居は、生活の負担を軽くするとは言い切れない。もしこれから3帯同居を検討される方は、必ず自分の置かれた状況を見直して、メリットとデメリットを天秤にかけてほしい。

柏木 理佳 生活経済ジャーナリスト

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かしわぎ りか / Rika Kashiwagi

1968年生まれ。豪州ボンド大学大学院にて経営学修士(MBA)取得。育児中に桜美林大学大学院博士後期課程にて博士号取得(学術博士、「中国民営企業における独立取締役の監査・監督機能」)。米国企業勤務、北京の首都師範大学に留学後、シンガポールにて会社設立に携わる。嘉悦大学短期大学部准教授、実践女子大学大学院非常勤講師(経営管理論)。現在は、NPO法人キャリアカウンセラー協会理事、桜美林大学北東アジア総合研究所客員研究員。「日本を変えるプラチナウーマン46人」(『プラチナサライ』、小学館)にも選ばれる。海外で世界15カ国の人と働いた経験をもとに帰国後は、同時通訳、翻訳、通訳ガイドなども。また、「モーニングCROSS」コメンテーターなどテレビ・雑誌などで活躍中。公式サイト

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