逆パワハラはどうだろうか。厚労省が行った職場のパワーハラスメントに関する実態調査(2016年度)によると、過去3年間に「正社員の同僚同士のパワハラ」で相談があった企業は15.5%で、「部下から上司へ」が5.2%、「後輩から先輩へ」も2.0%にのぼるという結果になっている。正社員が正社員以外に対して行ったパワハラ相談も、19.1%に及ぶ。
新人でも、若手でも、パワハラをする可能性は十分にあるわけだ。それでは、若手はどんなパワハラをしがちなのだろうか。
まず、パワハラとは何かを整理しておこう。現状では法的な定義はないが、先述の「職場いじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」では、「同じ職場で働く者に対して、『職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性』を背景に、『業務の適正な範囲を超えて』、『精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる』行為」という3つの構成要素を満たす概念に整理された。この3要素を満たす典型的な行動類型として、「身体的な攻撃」「精神的な攻撃)」「人間関係からの切り離し」「過大な要求」「過少な要求」「個の侵害」の6つが示された。
注意すべきは「職場内での優位性」だ。これは地位だけを意味しているわけではない。職務の経験年数、専門知識、人間関係など、さまざまな優位性が含まれている。たとえば、英語が上手、パソコンが得意、あるいは業務に関する知識や経験といったことも優位性だ。
「優位性」は、上下関係だけではない
回数にもよるが英語が苦手な上司に翻訳や通訳を頼まれる都度、あるいはパソコンの使い方を聞かれる都度、舌打ちしたり、面倒くさそうな態度をとればパワハラにあたる可能性がある。
親会社からやってきた社長を、子会社の人間がみんなで無視したり、情報を渡さなかったりして満足に仕事ができない状態に追い込む、あるいは気に入らない上司をみんなで無視したり、頼まれた仕事を後回しにしたり、飲み会などに1人だけ誘わないといったことをすれば「人間関係からの切り離し」にあたる。もちろん、上司に対して「ハゲ」とか「太ってる」とか身体的な悪口を言うのはアウトだ。
一方、非正規の社員などに対して正社員は、新入社員といえども立場が強い傾向にある。無意識のうちに横暴な態度をとっていないかどうか、セルフチェックしておこう。
ダイバーシティが進展するとともに、さまざまな個性をもった人たちが一緒に働くことになる。慣れないうちは、価値観がぶつかりあいハラスメントがおこりやすい。これからも、さまざまなハラスメントが生まれ、その都度、対策が打たれることだろう。
いうまでもなく、ハラスメントの最良の防止策は、コミュニケーションを通じてお互いを理解し合い、ハラスメントが起きにくい職場環境を形成すること。相手はどんな言動が不快に思うのか、それを理解・想像できればハラスメントは防げる。柔軟な発想ができる若いうちに、多様な人とつきあい、コミュニケーション能力を磨いておいてほしい。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら