元代表の戸田和幸が狙う「サッカー解説」革命

2002年日韓大会の「潰し屋」が知的な男に転身

サッカーを大真面目に語り、ピッチ上で起きている現象を正しく言語化する戸田は、出演するメディアによって、扱う事象の深さを変えたり、コンビを組む実況アナウンサーの特徴に合わせながら、視聴者が理解できる言葉を選ぶことを意識しているという。

「扱う事象は独自性を出すけど、言葉は平坦にしている」

戸田のわかりやすい解説を支えるのは、現役時代さながらの高いプロ意識に基づく徹底した準備にある。解説を務める際は、各チーム最低でも過去2試合分の試合映像をチェックし、分析したうえで解説の仕事の日を迎えるようにしている。試合にもよるが、長ければ、1試合あたり4時間程度をかけてじっくり分析することもあるという。

また、商売道具である喉のコンディショニングには細心の注意を払い、外出時のマスクは欠かさない。時には吸入器で喉を潤し、本番前には発声練習をし、喉や顎周りを柔らかくする。

こうして戸田は、サッカーという難解で奥深いチームスポーツにおいて、ピッチ上で今何が起きているのかを、一つひとつ紐解いてわかりやすく言語化できる解説者として、視聴者やテレビ局から高い支持を得ていったのだった。

現在のスポーツ中継に対する疑問

例えば、サッカー中継において、実況担当のアナウンサーが「各チーム1人づつ注目選手をあげてください」と解説者に質問するケースは非常に多い。制作サイドは、視聴者に対して、試合のポイントを簡単にわかりやすく伝えるために、そのような質問をするのだろう。

「メッシvsロナウド」といったように、注目選手やキーワードがあらかじめ台本に組み込まれている番組もあるそうだ。そこには、番組制作のプロが、サッカーの専門家に言葉や視点を与え、サッカーの話をさせるという、いびつな構造が存在している。

戸田は、このような番組制作サイドが作った「型」に当てはまることを良しとはしない。これでは、サッカーの本当の魅力を伝えることはできないと考えているからだ。

現在の解説者としての取り組みを話す戸田和幸氏(筆者撮影)

9月から戸田は、新しい解説のあり方を提案する取り組みを始めた。

それが、「URA_KAISETSU」(裏解説)だ。「URA_KAISETSU」とは、戸田がスタジオで試合を見ながら淡々と解説する様子を映像化してネット配信したものだ。

テストマーケティングを兼ねて、森保一監督体制となったサッカー日本代表戦2試合(コスタリカ戦とパナマ戦)を無料配信すると、いきなり視聴回数11万を超える反響があった。

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