確かに、人の心にかかわる業務は自動化するのが難しいとされていますが、その常識はすでに通用しなくなっているように思われます。たとえば、人の心にかかわる仕事の代表とされる心理カウンセラーの仕事までも、AIによる自動化の射程圏内にすでに入ってきています。人は相手の感情を主観で判断してしまいがちなので、逆にAIの客観性はカウンセリングの質を上げてくれるというのです。人は思い込みで相手の心情を読み間違えることがよくありますが、人の複雑な感情を優れた画像認識力で読み取れるAIであれば、相談者の心に寄り添った適切な言葉をかけるのは技術的に難しくないといいます。将来はカウンセラーの仕事までもが、AIに代替されていてもおかしくはないのです。
大企業で高学歴の人ほど「用なし」になる危険
今のところ、日本の大学進学率は50%を超えていて、アメリカと匹敵するほど高い水準を誇っています。ではなぜ大学進学率が高いのかというと、多くの学生が大学に行けば良い企業に入り、高い収入が期待できると考えているからです。
ところが、AI社会の到来で、そういった意識は大きく変えなければいけない状況になってきています。メガバンクの新卒採用を抑えた人員削減計画を見ていても明らかなように、業務の自動化が普及することによって最も不利益を被るのは、何を隠そう高学歴の人々になるからです。これは、日本の学歴社会や企業社会において、大きな価値体系の変化が起ころうとしていることを意味しています。
そのような大きな変化が本格的に起こるまでに5~10年程度の期間しか残されていないとするならば、大企業にしても中堅企業にしても、社員の意識改革にできるだけ急いで取り組んでいく必要があります。学歴社会というエスカレーターをうまく昇ってきた社員の立場からすれば、良い企業にいるから安心だという価値観がこれから消滅しようとしているからです。一人ひとりの社員が自らのキャリア形成を自らで考え、個人で仕事が評価されるスキルを身に付けていかなければ、企業社会では用なしとされてしまうという危機意識を持たなければならないのです。
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