アメリカ中間選挙後は市場の動揺が頻発する

トランプと議会の対決で内外のリスクが上昇

大統領の政党が中間選挙で負けた場合、大統領は自らの裁量で政策を実行に移すことができる通商や外交政策などに通常、注力する。中間選挙において、自らの政党が下院で多数派から少数派に転落した歴代政権でも、同様の動きがみられた。1990年中間選挙後のジョージ・H・W・ブッシュ政権のイラク戦争、1994年中間選挙後のビル・クリントン政権のボスニア戦争、2010年中間選挙後に打ち出されたオバマ政権のアジア回帰戦略などがその例だ。トランプ政権も議会が膠着状態に陥る中、後述の通商政策やそのほかの外交政策に注力していくだろう。

トランプ大統領は下院で弾劾訴追されたとしても、上院では弾劾決議が成立する可能性は極めて低い。上院で弾劾決議が成立するには3分の2の票が必要であることからも民主党のみの議席数では足りず、共和党議員の協力が不可欠だ。したがって、明らかな犯罪行為などが見つからないかぎり、罷免は困難だ。だが、民主党が弾劾手続きを始める行為だけでも政治の混乱を招き、それがアメリカの金融市場にも波及し、さらに世界の市場に不安定化をもたらしかねない。

共和党が完勝でも、強硬な通商政策は続く

(3) 「レッドウォール」シナリオ:共和党、上下両院維持

中間選挙で仮に共和党が上下両院で多数派を維持する「レッドウォール(赤い壁)」のシナリオが実現すれば、次期議会の「ねじれ議会」となることを織り込み済みの市場は、歓迎ムードに包まれよう。少なくとも短期的には米国経済の成長は加速し、株価の上昇など市場は安定化するだろう。トランプ政権が「ねじれ議会」を回避できれば、より市場寄りの政策が推進される可能性が高まるからだ。

しかし、インフラ整備政策については、仮に共和党が上下両院を維持した場合も、可決は容易ではない。財政規律を重視する多数の共和党議員の抵抗が予想されるからだ。ガソリン税などは有権者に不評であり、財源確保が難しい。とはいえ、大統領の選挙公約でもあるため、小規模のインフラ整備法案を可決するのではないか。

共和党は上下両院で過半数を獲得するも、上院では議事妨害(フィリバスター)を防ぐために必要な60議席までは達しないため、財政調整措置を利用して一部法案の可決を目指そう。最も有力なのが財政調整措置を利用して「税制改革2.0」を可決することだ。財政赤字拡大の懸念があるため規模は限定的であろうが、所得減税の恒久化あるいは延長などが盛り込まれるであろう。ジョージ・W・ブッシュ大統領も2001年と2003年、上院で出身党の共和党が議事妨害回避のために財政調整措置を利用することで、減税法案を成立させた。

だが、「レッドウォール」シナリオであっても、2020年大統領選が本格化するにつれ、政治情勢は不透明となり、議会運営を妨げることになろう。その結果、トランプ政権は通商政策などの強硬化に走るだろう。

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