アメリカ中間選挙後は市場の動揺が頻発する トランプと議会の対決で内外のリスクが上昇

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中間選挙後は政治の混迷が深まり、市場はボラタイルになる可能性が高い(写真:ロイター/Eric Thayer)

アメリカ経済にとって、2018年11月6日に投開票が行われる中間選挙の行方は極めて重要だ。

大方の予想どおり民主党が下院を奪還した場合、または、その可能性は低いが民主党が上下両院を奪還した場合は、「ねじれ議会」の状況となり、議会民主党がドナルド・トランプ大統領に対決姿勢で臨むため、アメリカの政治はますます混沌とする。

一方、予想外にも共和党が上下両院で多数派を維持した場合、政治リスクの低下、そしてより市場寄りの政策への期待感から少なくとも短期的には市場は好感し、株価などは上昇に向かうだろう。だが、いずれのシナリオでも、アメリカ経済に残る懸念は、大統領が強硬な通商政策を発動することだ。特に「ねじれ議会」ではそのリスクが高まる。

「ねじれ議会」が出現する可能性が高い

ワシントンの政治アナリストの間では、中間選挙では「青い波(ブルーウェーブ:青は民主党のシンボルカラー)」が到来し、民主党が下院を奪還するも、上院は共和党が維持するとの見方が支配的だ。政治経済などの統計分析に定評があるウェブサイトの「ファイブサーティーエイト」の最新分析(中間選挙約1週間前の2018年10月29日時点)では、下院で民主党が過半数を獲得する確率は約86%、共和党は約14%だ。一方、上院で共和党が過半数を獲得する確率は約82%、民主党は約18%だ。

上院では民主党は現状から2議席増やせば過半数(51議席)を獲得できる。だが、2議席とはいえ、至難の業なのだ。民主党は改選35議席中、現有の26議席を守ったうえで、さらに2議席を増やさねばならないのに対し、共和党は改選議席中、現有の9議席だけ守ることで、過半数を維持できるからだ。

さらに詳細を見ると、民主党が守らなければならない26州のうち、共和党支持の傾向が強いレッドステートを含む10州は、トランプ大統領が2016年大統領選で勝利した州だ。しかも、10州のうち5州でトランプ大統領は2桁の得票率の差で勝利している。このように上院の接戦州では競争環境がすでに共和党有利になっている。

一方、下院435議席のうち、民主党が過半数に達するには現有議席数193に加えて新たに25議席も獲得する必要がある。だが、うち2議席は現在空席の民主党が強い選挙区であるため、実質23議席ほど共和党から奪えば過半数を獲得できる見通しだ。社会の分極化によって接戦選挙区が年々少なくなっている中、接戦になるのはわずか29選挙区で、民主党はうち9議席を獲得すれば過半数になると「クック・ポリティカル・レポート」(2018年10月30日時点)は予想している。

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