「アジアにシリコンバレー、作ったるで!」
――世界の起業家たちの動き方、マインドなどの特徴があれば、お教えください。
伊佐山:日本のスタートアップは、投資家目線で見ていると、短期的なトレンドの中で起業している起業家が比較的多い。例えば、案件を10件見ると、ゲームなど流行の延長線上のものばかりになります。一方、シリコンバレーは「個人向けの乗り物を作りました」「家の鍵を無線化して、入退出をクラウドで管理します」という突拍子もないアイデアがある(笑)。それが後にトレンドになるんです。また、シリコンバレーのスタートアップは、構想が大きいものが多い印象です。たとえば、日本ではウエアラブル(身に着けられる)端末系のベンチャーが多く出ていますが、シリコンバレーでは、自動車から医療デバイス、新しい輸送機器、宇宙旅行など、「ブームの少し先」を目指している人が多い。
孫:「シンクビック(Think Big)」ということはよく言われる。そう考えると、スケール間がまだ小粒かもしれないですね。
――今後の日本のベンチャーシーンにおける、お2人の思いを教えてください。
孫:一言では言い尽くせませんが、端的に言うと「アジアにシリコンバレー、作ったるで!」と思っています。自分たちだけだと小さくしかできないのはわかっていますが、「シリコンバレーのエコシステム(生態系)」のようなものを作りたい。僕は森みたいな生態系をイメージしていますが、さまざまな動植物がいて、水が循環している姿。おカネが「水」。まずはオアシスのように小さくてもいいから、循環する「シリコンバレー」のようなものを作ろうと。
「モビーダ・ジャパン」でスタートアップアクセラレーターをやる中で、これからの課題は2つあると思っています。ひとつは、500万円ほどの小額投資の次の資金調達の問題です。本来は数千万~2億円くらいは必要だけど、実績が今いちだから、資金調達ができないベンチャーも多く、「小額」から「中規模」の資金調達の間を埋める必要がある。
もうひとつは、われわれのプログラムに参加して、一人ひとりのスキルはいいけど、チームとして次の資金調達ができなかったという人がいる。そうした人たちにすぐ次の仕事のオファーがきて、路頭に迷わなくてもいいというセーフティネットを作ることも必要だと思います。当然、その先も必要ですが、ひとつずつ循環させる仕組みを作っていければと思っています。
伊佐山:僕は、泰蔵さんが最も得意としている、立ち上げからある程度まで育てるということに対して、さらにその企業を大きく、特に海外に出ることへの支援とおカネを出せたらと考えています。
うまく循環させるためには、大企業のリソースをベンチャーにつなげるということが必要になる。現在、アメリカは、IPO(新規公開)件数も増えている一方で、8割以上はM&A(企業の合併・買収)されている。大企業の中で経営陣の中に残る人もいれば、M&Aで得た資金で起業に挑戦する人もいる。こうした循環が日本には、少ない。大企業に対して「オープンイノベーションは、ベンチャーを積極的に経営戦略の柱として取り込むことだ」ということを啓蒙し、泰蔵さんの動きとつなげていきたい。僕は少なくとも、10年、20年はそういったベンチャーと大企業が結び付くことができる「巨大な“場”を作るんだ」という思いで、泰蔵さんらの力を借りながらやっていきたい。そんなのできるわけないという人が圧倒的に多いとは思いますが、だからこそやってやるという思いですね。
(構成:山本 智之、撮影:今 祥雄)
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