残念ながら、まだ特効薬は見つかっていないが、中国としても国際法と国際慣習を尊重すべきであり、そのため「中国の特色ある社会主義」を国際化し、国際的なルールと両立させることが必要だ。
本稿では国際化問題に深入りしないが、国際化と並んで重要なのが相互依存関係をいっそう進めることである。これはすでにある程度進行しており、日中間で意見の相違が生じても深刻な問題にならないよう、また、日中双方が合理的判断をする冷静さを失わないよう、歯止めの役割を果たしている。
今回の合意にも、ハイレベルの交流の促進、通貨のスワップ協定などは、この点で一定程度だが評価できる。52の民間プロジェクトも、さまざまな条件をクリアすることが必要だが、相互依存関係の深化に役立ちうる。
また、合意には含まれていないものの、中国は安倍首相訪中を機に、多国間経済協力、たとえば、環太平洋連携協定(TPP)にも関心を向け始めたとも言われている。その背景には、アメリカとの貿易戦争が影響しているのは明らかであるが、中国がTPPに加われば、経済面での相互依存関係が深まる。
一方、中国側では、日本との相互依存関係が深まることを肯定的に見ないわけではないが、全体的には日本に対する警戒心がまだ強い。「日本と相互に依存し合っている」ことを積極的に評価することにはブレーキがかかっている。
対米関係悪化で日本を見直した中国だが…
習主席は安倍首相を迎えるのに、かつてのように仏頂面ではなく、普通の面持ちで会ったが、第三国の場合と比較してみると、熱烈歓迎ということでなかったのは明らかだ。また習主席は李首相に日本との外交の前面に立たせ、自らは一歩離れて、しかし元首としての高い立場から接していた。そうした態度にも一種のわだかまりがうかがわれた。
共同記者発表では李首相も日中関係の難しさについて言及。「何事も最後が大変だから、9割うまくいっても半分、と思わなければならない」とやはり日本への警戒心をあらわにした。
中国は安倍首相の訪中を機会に、対日戦略を手直しした。それには、アメリカとの関係が円滑に進まないことへの懸念や北朝鮮・韓国との関係変化など対外的な事情のみならず、経済が鈍化していることなど国内的な事情も背景になっているのだろう。
日本側も対中戦略をより強固なものとしていく必要がある。日本外交全体の戦略としては、対米関係が最重要であることなど、国別の考慮も必要だが、中国との関係で求められるのは、中国の国際化を促すことと、相互依存関係を深めること。日本は中国の国家資本主義への対応を含め、それらを戦略目標としてその実現に努めるべきだ。日本の首相の公式訪問は約7年ぶりだったという貴重な機会であっただけに、安倍首相訪中の成果は戦略的目標達成の観点からも評価すべきである。
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