日本人が知らないカンボジア「独裁化」の現実 中国がフン・セン政権の強権を支えている
高橋:2010年以降、カンボジアへの経済的支援は、どの国と比較しても中国がダントツにトップに躍り出てしまっています。首都プノンペンの街を見ても、さまざまな中国系の開発企業が入っており、「ここは中国の街なのではないか」という程のビル群が建てられています。その近くにはもちろん、中国の人々のためのレストラン街もできています。カンボジア南部の1つの州は、第2のマカオになってしまうのではないかと表現されるくらい中国の資本が入り込み、カジノがたくさんできています。中国の人々の流入がカンボジアに続いているという、目に見えてはっきりわかる状況になっています。
10年以上の現地取材で見た、独裁化への確かな変容
堀:高橋さんはもう10年以上現場での取材活動を続けています。最初にカンボジア取材をしたのは15年ほど前だそうですね。
高橋:2003年のことです。
堀:10年前からは現地に住んでいるんですよね。独裁化、強権化というのは突然だったんですか? それともじわじわと進んでいったんですか?
高橋:この33年間フン・セン首相率いる「カンボジア人民党」が、カンボジア全土で構成員を増やすため、さまざまな政策を採ってきました。自らの地位を確固たるものとするための段階を、1つひとつ踏んでいったと思われます。実はその中でたくさんの弾圧があったわけで、突然弾圧が進行したわけではない。その隠された事実の中で、弾圧は今までも幾度も行われてきたと考えています。
堀:僕がカンボジアの異変を強く感じるようになったのは去年のことです。ちょうどその頃の写真があります。フン・セン政権による弾圧が熾烈さを増した2017年9月のものだそうですね。これはどういう写真ですか?
高橋:最大野党「カンボジア救国党」の政党看板が次々と破壊されていきました。壊されているところには、「カンボジア救国党」の党首と副党首の顔写真があったのですが、それが丸ごと切り取られてしまっている。国道を走っても、黒い炭のようなもので塗りつぶされている場所がいっぱいありました。このような形で弾圧が目に見えて進行していったのが、去年9月付近でした。
堀:誰が剥がしているんですか?
高橋:はっきりとはわからないですが、間違いなく、「カンボジア人民党」支持者、または構成員、またはそれを指示され断れない人々がこのようなことを行っていると考えられます。
堀:次の写真がこちらです。野党の党首の方ですよね。
高橋:はい。約1年間投獄下に置かれていた「カンボジア救国党」党首のケム・ソカーさんが、去年6月の地方選挙で投票するシーンです。彼は1年間投獄下に置かれ、つい先日に釈放されました。今は自宅軟禁状態にあり、一切の面会も許されず、もちろん政治活動もできない状況に置かれていると言われています。