日本人が知らないカンボジア「独裁化」の現実 中国がフン・セン政権の強権を支えている
堀:民主主義を育んでいきたいけれど、圧倒的な経済格差や貧困もある。そういうところに巨大な資本を持った国が「援助します」と入ってくる。そうなった時に、この国の将来に何をもたらすのかなということは、すごく心配にもなります。今後カンボジアと、どういう関わり、支援をしていくべきだと思いますか?
高橋:支援というのは、民主的な形で使われることこそが国際協力だと思います。その意味をもっと人々が理解をして、国際協力の本質をもう一度見つめ直して、カンボジアを捉えてほしいなと思います。
子どもたちの未来のために、私たちが今できることとは
堀:高橋さんが取材で向き合っている地域の方々はどんなことを話されていますか?
高橋:彼らがいつも私にかける言葉があります。それは、「なぜ私たちがこの巨大な権力に対して戦っているかわかりますか? それは、自分たちの子どもたちの未来のためだ。子どもたちが自らの祖国から弾圧を受ける、そういう未来ではなくて、子どもたちが自分の祖国に夢を描けるような未来のため、私たちは今命をかけて戦っている」と。
堀:この写真では、子どもたちが当局者と対峙していますね。どういう状況ですか?
高橋:これは、政権によって土地を強制的に収奪されてしまった子どもたちが、「家を、土地を返してほしい」と跪いて懇願する一場面です。なぜ子どもが跪いて、涙を流して、大人に懇願しなくてはならないのかと、いつも現場で切り取っていて悔しい気持ちになります。
堀:当局と向き合い続ける市民がいて、こういう市民の皆さんを支える活動は、現場でどのように展開されているのでしょうか?
高橋:ある一部の人権NGOはとても頑張っています。彼らと共に一緒に現場に来て、この事実を伝えようと、彼らのことをサポートしようと、常に最前線の現場で共に立ち上がっているNGOもあります。ただ、残念ながら日本の NGO が彼らとともにデモの現場にやってくる姿は、この5年間で1度も見たことがありません。
堀:発信も限られている。支援も限られている。それは今の政府にとってみれば、都合のいいようにいくらでも成り立ってしまいますね。でも、もう30年君臨しているわけですよね。
高橋:30数年間権力の座を維持すると、やはりいろんな歪みが生まれてきます。その歪みの集約が今年の総選挙だったのではないかなと感じます。
堀:中国の覇権の争い方については議論をすればいいと思います。しかし、日本国内でも「国防」だ、「安全保障だ」と勇ましい話をする政治家の方が多いですが、「カンボジアの状況を見てよ」と僕は思います。こういうところにこそ関わって解決していくことが、日本とってもすごく大事なのではないかと思います。高橋さんは、今年から来年にかけては、日本での発信活動を活発に行うんですよね。
高橋:来年2月まで、写真展と写真集を通して、この5年間のカンボジアの人々の切望を届けたいなと思っています。
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