45歳、大阪の会社員→バー経営者が得た稼業 映画の舞台にもなった味園ビルで今日も働く

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お店の人気、ビルの人気、どちらも高く、銭ゲバはとても順風満帆に思える。

お客さんからは「さぞかし儲かっているんでしょう?」と聞かれることも多い。

楽しいのと、しんどいのをはかりにかけて、かろうじて楽しいが勝ってるくらいの感じです(筆者撮影)

「確かに収入は増えてますけど、それでもあくまで『なんとかやっている』状態ですよ。収入もサラリーマン時代のほうが断然多かったです。

部屋を借りたのも4年前です。40代になって初めて自室を手に入れました。最近はアルバイトを雇うようになったのですが、それでも任せっぱなしにはできず、ちょくちょく顔を出してしまいますね。

楽しいのと、しんどいのをはかりにかけて、かろうじて楽しいが勝ってるくらいの感じです。相当ストレスもたまってるようで、接骨医に行くと『肩の筋肉がカチカチだ』って言われます」

3カ月後にはどうなっているかわからない

ムヤニーさんはいつも「3カ月後にはどうなっているかわからない」と思いながら働いているという。たとえばインフルエンザにかかって1週間寝込んだだけで、その月の収入は激減してしまう。会社員時代と違って誰も保障してはくれない。だからどうしても行動は慎重になる。

店舗を増やす話もたまに出るが、具体的な話にはなかなかならない。他人を完全に信用することはできないし、結局は自分でカウンターに入って働くのが好きなのだ。

「お客さんから『バーを経営したいんですけど……』って相談されることもあります。そんなときは『やめといたほうがいいで』って言うようにしてます。『人からはうらやましがられるけど、内情はそうでもないで』って。『それでもお店を開きたいなら、絶対に借金はせんとき!! 立ち上げは慎重にな!!』って助言します」

ムヤニーさんは、そもそも店を立ち上げた時は1~2年やって飽きたらやめようと思っていたという。しかしいつの間にか、愛着が湧いた。現在の楽しい状況が続けばいいな、と思うがそれ以上深くは考えていない。

お話を伺っていてムヤニーさんは、慎重さと能天気さをバランスよく持っている人だな、と思った。

「若い人によく

『将来、何やっていいかわからないんです』

って相談受けますね。『やりたいことなんてないほうが普通やで。やりたいことある人なんて3割くらいちゃうか?』って答えます。目標を見つけてそれに向かってバリバリと生きていくというのもいいでしょうけど、生活をする中で何かしらやっているうちにいつか“やりがい”を見つけられたらそれでいいんじゃないかな?と思います」

「深夜喫茶 銭ゲバ」は今日も、味園ビルで営業している。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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