45歳、大阪の会社員→バー経営者が得た稼業 映画の舞台にもなった味園ビルで今日も働く

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その数年前に、会社で仲良くしていた後輩のお父さんが亡くなった。後輩は貯金がなく葬式をあげるお金もままならない状態だった。

「30万円貸してほしい」

と頼まれて、ムヤニーさんは後輩に40万円貸した。後輩は契約社員だったので、数年で契約が切れて別の職場に移ってしまった。しばらく連絡は来ていたのだが、プツリと連絡がなくなってしまった。

「飛んだな、と思ったけどそもそも返ってこなくてもいいやと思って貸したお金だったんで仕方ないなってあきらめてたんです。

すっかり忘れていたんですけど『お店をやろうか?』って盛り上がってる時に、急に連絡が入って『おカネができたのでお返しします』って言われたんです」

それまでは「いつかお店開けたらいいね」とノリで話していただけだったが、急に資金が降って湧いた。

ならば「やろう」と現実的な話になった。

やると決めたのはいいけれど

「やるって決めたのはいいですけど、完全にド素人でした。当時は味園ビルより、日宝三ツ寺会館(心斎橋2丁目にある飲み屋が密集したビル)のほうがはやっていたんですが、いきなりはやっているところでやるの恐いな、と思って味園ビルにしました」

味園ビルは当時20店舗ほど店が営業していたが、まだまだ空き物件が多かった。空き物件から好きにお店を選べるのはよかった。

仲間うちで集まりダラダラできる空間にしたかったので、バーカウンターだけでなく、ボックス席がある店舗を選んだ。

「店内には『夜逃げをしたのか?』というくらいいろいろな物が置きっぱなしになってましたね。ピンク電話機やレーザーカラオケ機器やボトルキープの札やらいろいろ……。1カ月半くらいひたすら掃除しました」

仲間と一緒に鍋を突きながら店名について考えていた。いいアイデアも浮かばず、途中からマンガの話になった。『銭ゲバ』(ジョージ秋山)の話で盛り上がってる時に

「深夜喫茶 銭ゲバ」の看板(筆者撮影)

「店名、銭ゲバでいいんちゃうか? インパクトあるし」

とあっさり決まった。

「店内が喫茶店っぽい雰囲気だったので、『深夜喫茶』と冠をつけました。喫茶店ならばコーヒーを置くことにしました。コーヒー置いてる店ほとんどないんですよ。お酒飲んだ後に、コーヒー飲みたがる人ってけっこう多いんですよね。

ノーチャージで1杯500円というのも、素人がしっかりおカネを取るのが怖かったんですよ。この値段なら怒られないだろうって決めました(笑)。ただ長くお店を続けるうちに、酒税は上がりましたし、物価も上がっていますから、結局段々値下げしているようなもんなんですよね。ただワンコインで1杯飲めるというのにこだわりがあって今のところは値上げをする予定はありません」

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