風邪を引きやすい人とそうでない人の差 実証と虚証の差は??

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音楽で細胞活性という手段も!

免疫力を強化するには、日頃から筋量を蓄えて、一つひとつの細胞が十分に機能を発揮できるようにしておくことが大切。しかし、すでに風邪のシーズンに突入している。弱った細胞を元気にする秘策とは。

「風邪を引くのは、ウイルスや食生活、ストレスなど、複合的な要素が絡んできます。一般的には、バランスのよい食事による栄養、十分な睡眠、ストレス発散などと言われていますが、忙しい会社員の人が100%実行するのには無理がある。私たちが行った実験では、脳が免疫細胞の司令塔に影響を及ぼすことがわかっています。日常生活をほんの少し見直すだけで、風邪の撃退も可能です」

こう話す新見准教授が、イグノーベル賞を受賞したのは、心臓移植をしたマウスに音楽を聴かせるという研究。免疫を抑制しないと平均7日程度で移植した心臓は拒絶反応によって止まる。

そんなマウスに、さまざまな音楽を聴かせたところ、イタリアの作曲家・ジュゼッペ・ヴェルディの「椿姫」を聴かせたマウスでは、移植した心臓が最長で90日、平均約40日間動き続けた。モーツアルトでは平均約20日間、アイルランドの歌手・エンヤは平均約10日間、ほかの音楽は無効だった。この研究によって、ある種の音楽が、免疫機能を司る細胞を増やし、拒絶反応を回避させることが明らかとなった。

「今回の実験でわかったのは、マウスの脳に音楽で刺激を与えただけで、免疫細胞に好影響を与えるということ。マウスの脳であるならば、当然、人間の脳への刺激でも、免疫機能を高めることはできるでしょう。心が身体に影響を及ぼすことが実証された。誰もが椿姫を聴く必要はないけれど、通勤時間帯に心地よいと思う音楽を聴くだけで、細胞に好影響を与える可能性があるわけです。

マウスの実験では、香りでも免疫細胞に好影響を与えることがわかりました。風邪やインフルエンザなどを避けたければ、音楽でもアロマでも、『なんだかいい気分』になれるものを見つけてください。自然に細胞が元気になり、アグレッシブな生活も維持できると思います」と新見准教授はアドバイスする。

安達 純子 医療ジャーナリスト

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あだち じゅんこ / Junko Adachi

東京生まれ。医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。大手企業のOLから転身。フリーランスの雑誌記者としてさまざまなジャンルの取材を行う中で、病気の発生メカニズムに興味を持ち、医療関係の記事の執筆に比重を置くようになった。現在は、先進医療といった最新の医療状況をはじめ、免疫疾患や感染症などに強い関心を持つ一方で、生活習慣病といった身近な病気を対象とした記事を数多く新聞等で連載中。身体に個人差がある中で、その人にとっての健康とはなにか。病気の仕組みはどこまで解明できるのか。また、未知の病気の正体はどこにあるのかなどをテーマに現在取材を進めている。

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