ラクスルが目指す「シェアリング基盤」の可能性 仕組みを変えると効率化が進む

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松本:おっしゃるとおりですね。われわれがお客様に提供している価値は、主に2つあると思っています。1つは、製造業のアプローチを印刷や物流といった業界にインストールすることによって、結果的に大幅なコストダウンを実現するという価値です。現在のラクスルには、大手自動車メーカーや家電メーカーの製造現場出身者がたくさんいます。彼らは今まで培ってきた製造ラインのノウハウを印刷の世界に組み入れて、生産性の改善を追求しているのです。印刷において最大のコストは人件費で、生産性を飛躍的に高めることができれば、その比重は下がっていきます。仮に従来なら1時間当たり3000〜5000枚が生産量の限界だったとしたら、あえて1万5000枚のような高い目標を掲げて、どうすればそれに近づけられるのかを突き詰めていくわけです。こうして、その業界では今まであまり試みがなかった別業界のアプローチを採り入れていくことによって、圧倒的に生産性を高めてコストを下げられるのがわれわれの強みで、追随しようとする他社にとっては高い参入障壁ともなってきます。

ユーザーは格安料金で利用でき、印刷会社も利益を得る

小林:ラクスルを利用することで顧客が得られるもう1つの価値とは何でしょうか?

松本:併せて、インターネット企業としてのユーザーエクスペリエンスを提供することですね。ネットの場合は営業担当者が介在していませんから、極めて小ロットの小さな注文にも低料金で対応できます。たとえば、従来の商業印刷では平均単価が20万円程度ですが、われわれの場合はわずか1万円で、さらに中央値は平均よりさらに低いため営業担当者が対応したら、採算が合うはずがありません。もともと原価が7〜8割も占める商材なのですから。しかし、われわれは注文を大量に集めて1箇所で生産をすることによって、印刷会社がしっかりと利益を得られる仕事に変えられます。そして、お客様も小ロットの注文を劇的に安い料金でオーダーできるのです。

小林:御社のサービスの使い勝手については、私自身も強く印象に残っていますね。われわれは2017年の7月に会社を設立したのですが、その際にラクスルで名刺を製作しました。非常にスムーズに発注でき、同時期にある大手通信会社で行った会社の電話番号登録の手続きの煩雑さと比べると雲泥の差でした。電話番号登録のほうは途中で「戻る」のボタンを押すとそれまでの入力情報が全部消えてしまって心が折れてしまいましたが、ラクスルのほうはスムーズに発注が完了してビックリしましたよ。

松本:やはり、使い勝手次第で、ユーザーが感じるストレスはまったく違ってきますからね。われわれの場合は印刷だけにとどまらず、製作した折り込みチラシやポスティングチラシ、ポスターの配布や掲示までワンストップで代行するサービスも提供しています。そして、こうした印刷業以外のサービスまで直感的に理解できる形式で提示し、ユーザーとしっかりコミュニケーションを図ることが重要だとわれわれは考えています。そうすれば、より多くのユーザーが幅広いサービスを気軽に利用できるからです。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):もう1つ、御社の取り組みで面白いと思ったのは、マザーズ市場上場の際に開示した「成長可能性に関する説明資料」に書かれていたことです。R&Dを目的に自社で3台の印刷機を保有し、売上総利益率の継続的な改善を可能とするオペレーションを探求していくという内容でした。そうやって培ったノウハウを他の印刷会社にも展開していくためのパイロットテストのような位置づけとの理解でよろしいでしょうか?

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