ラクスルが目指す「シェアリング基盤」の可能性 仕組みを変えると効率化が進む

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小林:なるほど。御社はシェアリングプラットフォームを通じて、そういった構造に変化をもたらそうとしているわけですね。

松本:そのとおりです。われわれは多重下請け構造の末端に位置している人たちをネットワークでつないで仮想的に大企業化し、そのキャパシティをお客様にインターネットでダイレクトに提示しているのです。システムによって提供されているサービスですから、ピラミット構造の中で蔓延していた付加価値のない中間マージンもなくなるのです。たとえば物流なら、今までは荷主が支払った代金の5割以上が中間マージンとして消えていました。末端で実際に配送を担っていた人たちは、われわれのプラットフォームを通じて受注すれば、従来なら4しか得られなかった報酬が6に増え、荷主の負担も10から8に減るといったことになるわけです。

プラットフォームによるマッチングなら数分で発注完了

小林:ラクスルの基本的な経営思想は、プラットフォームによって需給を結びつけたほうが取引コストははるかに抑えられるということですね。

松本:もう1つ、需給のマッチングがよりスムーズになっていくのも利点ですね。大企業を通じた7次受けにまで達するような流れでは、実働に至るまでに1〜2日は要していたはずです。ところが、プラットフォームによって需給をマッチングさせれば、わずか数分で発注が完了するので、圧倒的に滑らかにオペレーションが進むのです。このように、プラットフォームのほうが大企業という形態によるサービス提供より圧倒的に優れていると私は確信しています。実際、世界で時価総額トップ10に入っている企業を見渡しても、グーグルやアマゾン、アップルといったように、ほとんどがプラットフォームを用いたビジネスによって、より多くのユーザーに受け入れられています。だから、これから先も時代はどんどんプラットフォーム化していくと私は考えているのです。

小林:その点、印刷業界や物流業界のように、日本ではまだプラットフォーム化があまり進んでいない領域もありますよね。そこに御社は着目したのですね。

松本:世界第3位のGDPを誇る日本の産業界ではB to Bの領域が圧倒的に大勢を占めていますが、実はこの部分のデジタル化がまったく進んでいません。印刷や物流だけにとどまらず、B to B産業のプラットフォームをいくつも構築することによって、20世紀型のままになっている日本の産業を21世紀型へとアップデートしていくというのがわれわれの掲げているコンセプトです。

朝倉:僕自身はラクスルは二重の意味で水平分業を実現している会社だととらえています。1つは、かつての電機メーカーなどに象徴されるような、バリューチェーンの各機能を丸抱えする垂直統合モデルから水平分業型モデルへのシフトを推進させるといること。そしてもう1つは、物流のように、分業はしているものの多重の下請け構造が常態化しているケースに対し、中間プレーヤーを水平に一本化させて円滑化と効率化を図っていることです。

小林:プラットフォームと言えば、単にマッチングのことだけを連想しがちだけど、松本さんの発言に出てきた「滑らかに進む」という表現がとても的を射ていると思いました。B to B領域には時間もコストもかかる上意下達方式が蔓延っていて、それらがラクスルの手にかかれば、より円滑な直接取引へと変わっていくということですね。印刷にせよ物流にせよ、発注する側からすれば、プラットフォームとかシェアリングとかいったことはさほど意識していないはず。今までと同じような感覚で印刷を頼んだら、もっと低料金で早く仕上がってきたので満足したという話になるのでしょう。

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