ラクスルが目指す「シェアリング基盤」の可能性 仕組みを変えると効率化が進む

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松本:海外のスタートアップの成長プロセスについて造詣のある投資家は、非常に高い理解を示してくれましたね。海外では、IPOを果たして間もないスタートアップが赤字であるのは当然のことです。スタートアップのことをよく知らない投資家からは、「営業利益はいつ黒字化するのか?」とかいったボトムサイドの質問しか出てきませんし、そういった視点に基づいて当社の公募価格が割高だと受け止めがちでした。しかし、スタートアップに精通している投資家は当社の本質的な企業価値について、極めてポジティブにとらえてくれました。

未上場の段階から投資家と頻繁にコミュニケーション

小林:投資家との対話については、御社はIPOの前から積極的に取り組んできましたね。おそらく、未上場企業としては異例の頻度だったと思いますが、それはどういった思いに基づいてのことだったのでしょうか?

松本:その件に関しては、完全に永見CFOのリーダーシップの賜物だと言えますね。海外の投資家は永見、国内の投資家は私が担当するというのが基本的な役割分担です。未上場の段階から、内外100社以上の機関投資家にラクスルという会社を理解してもらうために尽力してきました。こうして積極的に取り組んだ理由の1つは、やはり株主との対話が重要であるととらえていたこと。もう1つは、株主との対話を通じて経営が成長すると思っていたからです。

小林:上場、未上場を問わず、株式を保有してもらう以上は投資家との信頼関係が重要であり、そのためにも対話力が求められるということでしょうね。

松本:出資していただくのは非常に有り難いことである反面、素性をまったく知らない人に株式を持ってもらうことは、われわれにとってリスクともなりうるものです。だけど、われわれの場合は未上場の段階からとても良い投資家に恵まれたと実感しています。やはり、対話量を事前に十分に確保してきたことが大きく関係していると思いますね。上場後もその姿勢に変わりはありません。振り返ってみれば、実はわれわれ経営陣が最も成長したタイミングは資金調達の局面だったのです。シリーズDまで未上場でやってきて、投資家による厳格なデューデリジェンス(投資対象企業の適性価値の適正評価)を年に1本ずつこなしていく課程で、われわれは大きく成長できました。 

小林:資金調達が経営陣の最大の学びの場だったということですね。これは現時点で未上場のスタートアップにとっても、良き教訓となりそうです。

朝倉:その結果として、マザーズ上場企業としては珍しく、海外投資家の出資比率が高い状態になっています。

松本:ラクスルがプラットフォームを構築するうえでのキーワードの1つは、「再現性を持たせる」というものです。メルカリが天才によって作られた会社だとすると、ラクスルは凡人が興した会社だと思っています。だから、ある種の再現性を持たせれば、誰がやってもちゃんと結果が出るものです。ハコベルの立ち上げにおいてもラクスルで培ったナレッジを活用していますし、印刷から枝分かれして新たに展開している広告領域の事業でも今までに蓄積してきたナレッジをしっかりと生かしていきたいと思っています。爆発的にヒットしなくてもいいから、ちゃんと再現性を持って事業を立ち上げて経営管理を行っていける会社にしたいですね。

小林:一見すると印刷と物流との間には特に関係性がないように思われるし、実際のところ、僕自身も最初はそのように思いました。でも、本日のお話で関係性が見えてきたと思います。顧客の信頼をベースとしている部分、そして御社のプラットフォーム上で事業を展開することで、会計上では見えないシナジーが得られるという部分が共通しているわけですね。かねてから親交があったので御社の特徴をよく知っているつもりでしたが、改めて話をうかがって解像度が高まりました。本日はお忙しい中、本当にありがとうございます。

(ライター:大西洋平)

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