ラクスルが目指す「シェアリング基盤」の可能性 仕組みを変えると効率化が進む
小林:現場に精通していることを標榜する大手IT企業も見かけますが、会社全体としては確かに“現場力”と“IT力”が備わっていたとしても、えてしてそれらがうまく連携していないのが実情でしょう。ちゃんとマッチングしきれておらず、現場でわかっていることがITの方に反映されていません。御社が取り組んできたことは、今の大企業の組織形態では成しえないことだと思いますね。
松本:それは、ビジネスをどのようにデザインしていくかという考え方の違いによるものではないでしょうか? われわれの場合はUCD(User-Centered Design=ユーザー中心設計)という発想でデザインしていくようにしています。
通常、開発とは作業が上流から下流に向かって一方向に流れていくものでしょう。しかし、われわれがシステムを開発する際には、関係するメンバーみんなでユーザーやサプライヤーの現場に赴き、ひたすら観察を続けます。ハコベルを例に挙げれば、約50拠点の運送会社にエンジニアも含めてみんなで出向き、現状のワークフローがどうなっているのかを徹底的に観察しました。そのうえでペルソナ(主要な顧客像)を定めて、それを起点として考えた場合に、現状のフローにどのような課題があるのかを考えていったわけです。
日本の会計制度はIT企業にマッチしていない
小林:話を少し戻すと、粗利を継続的に高めていくことを非常に重視しているという話が出てきましたが、その点も御社の大きな特徴だと思いました。世の中の多くの会社は売上や営業利益をはじめとする様々な指標を複合的に見ていますが、あえて松本さんは、「ラクスルの企業価値は粗利で見るべきである」と宣言していますね。しかも、ラクスルにおける粗利とはこれだというところまで分解して開示しています。