ラクスルが目指す「シェアリング基盤」の可能性 仕組みを変えると効率化が進む
小林:だけど、そこから先がスゴイですよね。劇的に粗利が改善していますから。まさにベストプラクティスがつかめてきたということなのでしょうか?
松本:一般的なIT企業の場合は、「現地のメーカーと共同開発した紙を中国からどれだけ輸入して、その場合の為替リスクはこうなって……」などといった話はあまり出てこないはずでしょう。しかし、ラクスルのビジネスにおいては、コスト競争力が非常に重要な意味合いを帯びてきます。コスト削減においてよく言われるのは、「単に印刷会社に無理難題を要求して成り立たせているわけですよね」という指摘です。しかし、ラクスルのビジネスは印刷会社にコストダウンのしわ寄せが及ぶと、絶対にスケールできません。印刷会社から信頼を獲得し、ラクスルと組むことが収益面でも有利であることを体感してもらわなければ、われわれはキャパシティを拡張できないのです。
ユーザーとサプライヤーをともにエンパワメントする
小林:「成長可能性に関する説明資料」において、ラクスルのビジネスは「ユーザーをエンパワメントして取引量を拡大する一方、サプライヤーをエンパワメントしてキャパシティを拡大し、需要と供給がともにWIN WINとなる自律成長モデル」であると説明していましたね。このエンパワメント(能力を導き出す)という言葉を用いていることが御社のスタンスを象徴しているように感じました。ユーザーとサプライヤーをともにパワーアップさせているわけですね。サプライヤーに関して言えば、もっと生産性を高めて彼ら自身をもっと儲かる体質へと改善していくことに御社が貢献しているということでしょう。
松本:ユーザーとサプライヤーのパワーアップは社会的使命であるだけでなく、われわれが拡大していく唯一の方法でもあります。印刷会社がちゃんと儲かる構造を築き上げなければ、われわれの拡大が止まってしまいますから。
先にも述べたように、「仕組みを変えれば世界はもっと良くなる」というのがわれわれのビジョンですが、それを体言するための行動規範が「Reality、System、Cooperation」の3つです。
その中でも「Reality」が特に重要で、要は現場の解像度を徹底的に高めていくことが肝心です。つねに答は現場にあるので、とことん観察してシステム化、標準化し、それをソフトウエアに落とし込んだうえで、バリューチェーン全体で運営していくのです。ソフトウエアチームとサプライチェーンチームのどちらも、現場を基軸として「Reality」をひたすら追求していくというアプローチは共通していると思います。だから、エンジニアも含めて現場に足を運ぶわけです。