ラクスルが目指す「シェアリング基盤」の可能性 仕組みを変えると効率化が進む

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朝倉:ちょうどその頃に、ベンチャーキャピタル出身である僕の前任者が社外取締役を辞任したことも重なったわけですよね。

松本:そうです。その結果、社内取締役の比重が高くなってしまい、ガバナンスが弱くなることが社内で問題視されました。とはいえ、出資元から新たな社外取締役を派遣してもらうのでは、そのベンチャーキャピタルの色が強まりかねません。そこで、完全に中立的なスタンスの人物に社外取締役に就いてもらおうという話になって、朝倉さんの名前が浮上しました。

意図的に出資元の数を増やしていった

小林:御社の場合、出資しているベンチャーキャピタルの数が多く、特定のところに偏っていないという印象があります。いずれかの出資元のウエートが高くなることには、ガバナンスの観点からも抵抗があったということでしょうか?

松本 恭攝(まつもと やすかね)/1984年富山県生まれ。2008年に慶應義塾大学商学部を卒業し、コンサルティング会社のA.T.カーニーに入社。M&Aや新規事業、コスト削減プロジェクトなどに携わり、印刷業界の非効率性(コスト削減効果の高さ)を痛感したのを機に、2009年にラクスルを設立して代表取締役に就任(写真:Signifiant Style)

松本:ええ。意図的に、出資元の数を増やしていったという側面はありましたね。その理由の1つは、成長のためにより巨額の資金を獲得したかったからです。われわれはシリーズA(商品・サービスをリリースしてマーケティングを開始するフェーズ)で2億3000万円を調達し、シリーズB(ビジネスモデルを確立して規模を拡大していくフェーズ)に移ってからも2014年の2月に14億5000万円の資金調達を行っていました。けれど、それだけでは僕たちがめざしている域までスケールアップするのは不可能でした。当時、製造現場で使用する工具や部品、消耗品などをeコマースで手がけるモノタロウという会社が40億円を調達して規模の拡大に成功していたので、われわれも40億〜50億円程度を集める必要があると思っていました。当社の事業は資金を投じればしっかりと伸びていくビジネスモデルになっていたので、そのことをできるだけ多くのベンチャーキャピタルに理解してもらえるように努めました。

(画像:ラクスルの上場直前の大株主の状況。同社「CG報告書」より)

小林:なるほど、御社のビジネスモデルを評価するベンチャーキャピタルが増えれば増えるほど、1社当たりの出資比率はさほど高くなくても、次なるラウンドにチャレンジするための資金を獲得しやすいということですね。

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