由美香が卒業した大学は、名前を出せば誰もが知っている有名私大だ。その同級生たちが、就職に苦戦していた。
「女性でCAになった友達もいましたが、本採用ではなく契約社員で、年収が300万いかなかった。私は、ある会社に事務職として就職したんですが、自立して一人暮らしができるような給料はもらえなかった」
由美香は、当時の自分をこう振り返る。
「20代後半に、誰か相手を見つけて結婚してしまおうかと思ったこともありました。でも、自分が自立できていないのに結婚したら、夫に依存して生活することになる。社会的弱者のまま、旦那さんの顔色を見ながら一生暮らしていくのでは、後々自分がつらくなると思ったんです」
“会社の言い値で雇われている今の自分から、脱却したい!”
由美香は、公務員になることを決意した。そして試験に合格するために専門学校に通うことにした。
「そのとき、一緒のクラスで学んでいたのが、年下の彼でした。いつしか付き合うようになったんですが、私は公務員試験に一発合格したのに、彼はできなかった。試験に落ちるって、人格を否定された気持ちになる。4年連続で受けたけれど受からなくて、そのうち公務員になることをあきらめてしまい、非正規雇用で働くようになりました」
彼が希望を捨てずに試験を受け続けていたときは、「合格したら結婚しよう」という話も出ていたそうだ。しかし、公務員になることをあきらめ、非正規で働くようになってからは、「結婚」という言葉が、彼の口から出てこなくなった。
「ただ5年、6年と付き合ってしまうと、腐れ縁というか、ちょっとやそっとのことじゃ別れられないんですよ。いっときは、“私が年上なんだし、彼を食べさせていけばいいかな”と思ったこともありました。だけど、彼は、『私に養われるような結婚は嫌だ』と言う。だったら、“結婚という形にとらわれなくても、好きなんだから一緒にいられればいいかな”と思ったりもして、答えの出ない負のスパイラルに巻き込まれていきました」
そこで、由美香は新しい出会いを模索し始めたのだ。しかし、前記したように、コリドー街にも、合コンや友達の紹介にも、結婚できる男性との出会いはなかった。
「腐れ縁」を断ち切るきっかけになったのは…
そんなとき、仕事場で誤って転びアキレス腱を切ってしまい、手術と1カ月の入院を余儀なくされた。
「初めて1カ月休職しました。そのとき、いちばん頼りたかった彼があてにできなかった。彼が病院で甲斐甲斐しく私の世話をしたら、親に正式に紹介しないといけない。彼はウチの親には会いたがらなかった。結局1カ月間、母親の世話になりました。いい歳して、親を当てにしている自分が情けなくて。そのときに、彼との関係はきっぱり解消しようと決めました」
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