失明を乗り越え、パラリンピック目指す起業家 初瀬勇輔 ユニバーサルスタイル代表取締役
三十にして起業
メインの仕事は、知的障害者の人たちが携わる仕事のマネジメントや彼らへの指導だった。とはいうものの、彼らから教えてもらうことばかりだった。入社1週間で担当責任者が辞めることになったため、仕事の内容も、誰が障害者かもわからないまま、現場に立たされた。それが初瀬のマネジメント力を鍛えることになるとは、思いもよらなかったという。
「僕は知的障害者の方から教えてもらうことからスタートしました。仕事を通じて彼ら一人ひとりの能力や思いを知り、コミュニケーションの取り方を学びました」
幸運だったのは、部署に聴覚障害を持つ年上の男性が入ってきたことだ。唇の動きから会話が読めるその男性から、初瀬は手話を教えてもらった。「僕が企画内容を立案し、パソコンを上手に使う彼が資料を作りました。彼とコンビを組んで営業に出向き、仕事を増やしていきました。不足しているところを補い合うことで、ハンデを克服できることを、彼との仕事から学びました」(初瀬)。
初瀬がテンプグループを退職したのは2011年10月。起業を通じて「三十にして立つ」ことを志してきた初瀬を、創業者の篠原欣子・テンプホールディングス会長は「いつでも戻ってらっしゃい」と快く送り出してくれた。そして設立したのが障害者雇用コンサルティングを業務とする「ユニバーサルスタイル」だ。12年11月には有料職業紹介の免許を取得。現在のクライアントは約20社、登録する障害者は約100人に上る。
視覚障害を持つ土屋美奈子さんとは、視覚障害者柔道で知り合った。その土屋さんが東京都内のアパレル企業ギャラリー・ド・ポップに就職を果たしたのは今年4月。土屋さんは入社式で、同社の小林司社長から社名ロゴの入った柔道着を受け取った。
「ハンディキャップを持ちながら一生懸命スポーツに励んでいる人を、ぜひとも応援したかった」と小林社長。しかし、「どこにどんな人がいるのか。どうすれば雇用できるのかわからなかった」と振り返る。そのとき、橋渡しをしたのが、紹介業の免許を取得したばかりの初瀬だった。
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