女性医師が伝えたい「緊急避妊薬」の重要性

なぜ日本では普及しないのか?

一つ目の理由として、医師の処方箋が無ければ手に入らないことが挙げられます。日本でも、2017年に厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」でノルレボ錠について、薬局で薬剤師の指導のうえ購入できるOTC化への転用が議論されました。パブリックコメントでは、賛成が320件、反対はわずか28件という世論の支持を受けたにも関わらず、安易な使用が広がる、などの懸念から、OTC化への転用は見送られました。

しかしながら、ノルレボ錠は、性交渉後72時間以内に一回1錠(1.5mg製剤)内服しなければなりません。先ほど例に挙げた女性のように、連休初日の夜中に避妊に失敗してしまった場合、連休中に処方してもらわないといけません。平日になって病院を受診してからでは遅いのです。休日も診療している病院にアクセスできればいいですが、今の日本は全ての女性が入手可能な環境ではありません。薬局で手に入らない今、こうした例を引き起こしてしまっているのです。

二つ目の理由として、義務教育である中学校までの教育において、避妊やピル、アフターピルについて学ぶ性教育が不十分である点が挙げられるでしょう。私ごとですが、医学部に入り、緊急避妊薬のことを講義で学ぶまで、存在すら知りませんでした。もちろん、内服のタイムリミットがあることも。自分のカラダを守る手段として、もっと早く知っておきたかった、知っておくべきだったと思っています。

自分のカラダを守る

性教育の不十分な現状や、処方箋がなければ手に入らないというアフターピルの入手のハードルがまだまだ高い現状では、緊急事態に対処できない事態が発生することは避けられません。

日本でも、世界避妊デー(9月26日)に合わせて、緊急避妊薬のOTC化や入手アクセスの改善を求める署名キャンペーン「アフターピル(緊急避妊薬)を必要とするすべての女性に届けたい!」が立ち上がっています。「避妊を失敗したけれど、どうしたらいいか分からない」「仕事があって休めない」「土日・祝日で病院がやっていない」「学生には高額すぎて買えない」など、発起人であるNPO法人ピルコン理事長である染矢明日香さんのもとには、こうした相談がたくさん届いているといいます。

ピルや避妊についての教育の充実や薬局でも購入可能にすることによって、緊急避妊薬までアクセスしやすい環境を整備することは、女性がカラダを守る上で重要なことだと思います。医療者として、自分のカラダを守る知識をお伝えし続けると同時に、一人の女性として、1日も早く緊急避妊薬までアクセスしやすい環境となることを願っています。

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