寝不足時の運転があまりにヤバい科学的根拠 最悪の場合、逮捕される可能性も
その背景には、昨今、危険運転による刑罰が格段に重くなり、「重度の眠気の症状を呈する睡眠障害」も処罰対象になったことがあります。容疑者は、重度の睡眠障害があると診断され、運転中にときおり意識を失うなどの自覚があったにもかかわらず治療を怠ったため、過失致傷ではなく、危険運転致傷での逮捕となったのでしょう。
「重度の眠気の症状を呈する睡眠障害」といえば、眠っている間に何度も呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」をはじめ、数多くあります。今や成人の20人に1人が罹患するとされる睡眠時無呼吸症候群は、交通事故のリスクを格段に高めることが明らかになっています。
「寝不足での運転」は事故を招きかねない
ここでもうひとつ、みなさんに知っていただきたい問題があります。それは、睡眠障害や特別な疾患がない、ごく普通の健康なドライバーでも、睡眠の状態によっては危険運転の当事者になりうるということです。単なる睡眠不足でも、時間帯によってパフォーマンスがガクンと下がるため、酒気帯び運転と同レベルのリスクを背負うことになりかねないのです。
今回の事故のケースは、決して他人事ではありません。
健康になんら問題がなくても「酔っぱらったような状態」で運転している危ない人は、私たちの身近に実はたくさんいます。特に、終電くらいの時間帯を過ぎたら要注意。覚醒レベルがガクンと下がり、ドライバーのパフォーマンスが総じて低下するため、酒気帯び運転レベルの危険運転があちこちで行われているのです。
そのことを実証する、ある有名な研究報告があります。1997年にオーストラリアの研究者らが『ネイチャー』(世界的権威のあるイギリスの科学専門誌)に発表した報告は、睡眠の意識を塗り変えるほど衝撃的な内容で、研究者の間でも話題を集めました。簡単にご紹介すると、40人の健康な被験者が2つの試験に参加しました。
ひとつ目の試験は、朝8時に起床して翌日の昼までずっと寝ずに徹夜してもらい、30分ごとに、「動く物体をどれだけ正確に追跡できるか」を測定しました。この技能テストでは、注意力や反射能力といった、運転に直結するパフォーマンスの低下レベルがわかります。
ふたつ目の試験では、やはり朝8時から30分ごとに10~15グラムのアルコール(ワインならグラス1杯、日本酒ならお猪口3~4杯程度)を飲みながら同じテストを実施し、血中アルコール濃度の上昇とパフォーマンス低下との関係を調べました。
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