屋台骨の車載機器まで苦境、追いこまれるパイオニア
「ひとえに(低迷は)私の責任。忸怩(じくじ)たる思いだ」。パイオニアの須藤民彦前社長は頭を垂れた。10月末、2009年3月期の業績見通しを営業赤字転落に修正した。純損失は780億円(従来予想190億円)に膨らむ見通しだ。同時に、自身の引責辞任も発表。これで06年の伊藤周男元社長に続き、2代連続で社長が業績低迷による引責辞任に追い込まれた。
かつてのデジタル家電の旗手は、今や満身創痍だ。高品質のプラズマテレビに社運を懸けたが価格戦に破れ、世界シェアは5%以下。積極投資の方針を一転、今年に入りパネル生産からの撤退を決めた。“商売敵”のパナソニックからパネル調達するなど構造改革を進めるが、黒字化のメドは立っていない。世界初のDVD録再機を送り出した光ディスク事業も、単価下落で急激に採算が悪化している。
そこへ屋台骨の傾きが追い打ちをかける。収益源のカーナビなど車載機器事業が、欧米の自動車市場の失速で、事業利益は前期の4割まで落ち込む公算だ。安定して利益を生む事業は、もはや年商200億円のDJ機器程度というありさま。5期連続の最終赤字で、再び積極投資に打って出る元手も乏しい。かつては前社長の下に再建プランを携えて日参した投資ファンドもいたが、世界的な金融不況で姿を隠した。
「このままでは企業として生き残れない」。経営を引き継いだ小谷進新社長は危機感をあらわにする。電機業界全体に逆風が吹く中、パイオニアが長い低迷のスパイラルから抜け出す公算はあるのか。新社長に聞いた。
--須藤前社長が掲げていた、車載で稼いでプラズマに投資して成長する計画が狂った。次の成長戦略をどう描くのか。
車載がパイオニアの基盤というのは変わらない。経営資源は車載などに振り向ける。一方で、プラズマに社運を懸けて人もカネも使う戦略は転換する。利益の出る販路や製品に集中して、販売が40万台以下でも事業として成立できる体質にする。プラズマは11年度の黒字化を目指し、会社全体では12年度に回復のメドをつけるつもりだ。
--自動車市場の失速は長引きそうだ。本当に車載で成長できるのか。
カーナビは新興国市場で伸びている。ただしナビはソフトの固まりで、開発コストがかさむ。ここを克服できれば成長路線に戻れるはずだ。そのためには他社との共同開発が課題と考える。協業に活路を見いだすのが車載事業の大きな方向性だ。