30~50代が「親の介護」で職を突然失う苦悩 毎年10万人が介護を理由に仕事を辞めている

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いざ介護のために離職すると、辞めた後にさまざまな不安を抱くことがあります。一つは経済的なことです。収入が途絶えるので貯蓄を切り崩したり、介護を受ける家族の年金に頼らざるを得なくなります。いまの時代、正社員への再就職は難しいことが多く、将来にも不安を感じるようです。また、社会との接点が少なくなり、世間から取り残されたと感じる人もいます。時には、精神的に追い詰められ、体調を崩すこともあるのです。

「介護離職を防ぐには『仕事を持つ家族が自分で介護を行う』以外の選択肢を知ることです。まず、介護を受ける人が住む地域にある地域包括支援センターに相談しましょう。介護保険を利用した介護サービスにはどんなものがあるのか、仕事と介護を両立させるにはどうしたらいいか、などの情報が得られます」。

家族の介護離職を防ぐためには、表のような将来の介護に関するさまざまな内容を家族とよく話し合っておくことです。

家族と将来の介護の話をしておきましょう

家族が必ず覚えておくこと
□ 介護が必要になるかもしれない人の戸籍上の正確な名前、生年月日、住所
□ 居住地の地域包括支援センターの場所と名称
□ かかりつけ医、持病の病名と主治医

家族と確認しておくこと
□ 健康保険証、介護保険証、診察券、お薬手帳の保管場所
□ 預金通帳、各種保険証書、印鑑の保管場所
□ 現在の資産、ローンを含めた借金の有無
□ 親戚付き合い、友達付き合い、年賀状の保管場所
□ 近所付き合い、両隣の家の人の名前と連絡先
□ 民生委員の名前と連絡先
□ 趣味嗜好(しこう)
□ 生活パターン(1日、1週間、1カ月)
□ インターネット環境の有無、各種IDやパスワード

自分(私たち世代)の介護について確認しておくこと
□ 将来の介護状態を自分自身が受け入れられるか
□ 自分が介護を受ける気持ちの整理はできているか
□ 自分が介護を受けるとき、どこに誰と住みたいか
□ 毎月どれくらいの金額を自分の介護に使えるか
□ 自分は、介護に関する意思決定を誰に任せたいか
□ 延命治療についての自分の希望

「年末年始やお盆など、家族が集まるときが最適です。自分の意向を一方的に伝えるのではなく、家族の希望も聞きながら、すり合わせを行うことが大事。方向性を決めておけば、実際に介護が必要になったときに、スムーズに進められます」介護とは、身の回りの世話をすることだけではありません。身の回りの世話なら、家族以外の人に頼むことも可能です。

しかし、家族にしかできない介護があります。それは「意思決定の代行」です。介護を受ける人の生活方針を決めて契約書に押印し、時には延命治療についても判断します。前もって方向性が決まっていれば、家族も迷わずに判断できるのです。

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