USJ、春休み料金「8700円に1割値上げ」の思惑 「繁忙期は高く、オフシーズンは安く」の勝算

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ただ、こうした費用増を吸収するために入園料を一律で値上げすれば、入園者の満足度低下や入園者数の減少につながってしまう可能性がある。その点、ダイナミックプライシングなら、入園料に幅を持たせて利用者に割安な価格を提示することにより、悪影響を軽減する効果が見込まれる。

テーマパークなどレジャー産業の運営に詳しい余暇産業研究所の井手信雄主席研究員は「一律で値上げした場合、熱心なファン層は受け入れるが、年間の利用頻度の少ない一般客は高いと感じて離れてしまう懸念がある。中長期的な入園者数の拡大には裾野を広げる必要があり、一般客への対策が不可欠。USJは1日券が1万円の大台に近づいてきており、今後の展開も見据えて導入したのだろう」と分析する。

一方、実質的な値下げによって集客のテコ入れを狙ったレゴランドの場合は、ピーク期間の大人料金を据え置くことで、一律で値下げした場合に比べて単価下落を多少なりとも抑制することにつながっている。

音楽ライブも変動料金化

また、ホテルの宿泊や航空券はもちろん、近年では音楽ライブのチケットなどでもダイナミックプライシングを導入する動きが始まっており、テーマパークの利用者側でも、新しい料金体系を受け入れる素地はできている。ユー・エス・ジェイは「事前にゲストへのアンケート調査を行った結果、体験価値の向上につながると判断した」(同社広報)という。

入園料は、テーマパークの満足度や集客を左右する重要な要素となる。現状の料金が高すぎるという不満の声の一方、「海外の大手テーマパークとの比較では、国内テーマパークはまだ割安」(テーマパーク関係者)という見方もある。各テーマパークは入園者に受け入れられるかを見極めながら、価格設定の検討を続けていく必要がありそうだ。

島 大輔 『会社四季報プロ500』編集長

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しま だいすけ / Daisuke Shima

慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。総合電機メーカー、生活実用系出版社に勤務後、2006年に東洋経済新報社に入社。書籍編集部、『週刊東洋経済』編集部、会社四季報オンライン編集部を経て2017年10月から『会社四季報』編集部に所属。2021年4月より『会社四季報プロ500』編集長。

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