ようやく開場する「豊洲新市場」の3つの難題 総投資約6000億円、関係者からは不安の声

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ところが、都知事に就任した小池百合子氏は2016年8月、「土壌の安全性に懸念が残る」などとして移転延期を表明。同9月には豊洲市場の主要建物下で盛り土がされていなかったことが表面化し、その後、地下水から環境基準の最大100倍超のベンゼンも検出された。小池氏は関係者を処分するとともに汚染対策の専門家会議を再設置した。

2017年6月、同会議が「地上にある市場は科学的・法的に安全。地下は追加安全対策が必要」との報告書をまとめたのを受け、小池知事は追加安全対策を行ったうえで市場を豊洲へ移転する一方、築地は5年後をメドに食のテーマパーク機能を有する一大拠点として再開発するという基本方針を発表。これには豊洲市場内の観光施設の事業予定者など各方面から反発も出たが、都は同12月に移転予定日を「2018年10月11日」と正式決定した。

追加安全対策については2017年10月から地下空間床面のコンクリート敷設や換気設備設置、地下水管理システムの機能強化などの工事が行われ、2018年7月に完了した。小池知事は専門家会議による確認を受け「安全宣言」を行い、翌8月1日、都は農林水産大臣に開設認可を申請。そして9月10日に正式認可されたというのが大まかな経緯である。

連絡通路を通って両棟を行き来する

 ただ、関係者の間には新市場の開業を不安視する向きが依然として多い。ここでは豊洲市場が抱える問題点を3つ指摘しよう。

① 物流は本当に効率化するのか

豊洲市場は立体構造であり、荷物に上下の移動が加わる。また、水産卸売場棟と水産仲卸売場棟の間には都の補助315号線が走っており、両棟をつなぐ連絡通路を通って行き来する必要がある。

大手卸会社や仲卸業者らはこれまで何度も場内物流の習熟訓練を行い、基本の動線をチェックしてきた。ただ、「実際にそのときになって大量の荷物を動かしてみないとわからない」(水産卸大手幹部)。何しろ市場内ではターレ(電動の小型運搬車)やフォークリフトが約2600台も動き回る。しかも開場翌月の11~12月には取引が集中する繁忙期を迎える。ここを円滑にこなせるかが当面の正念場となる。

豊洲市場から見た環状2号線。この先の築地市場の工事が遅れ、未供用となっている。11月に暫定迂回道路が開通し、都心とつながる予定(撮影:尾形文繁)

場外物流にも不安が残る。築地市場跡地を通り都心と豊洲新市場などがある臨海部を結ぶ「環状2号線(環2)」は、市場移転延期の影響で完成が遅れている。都は市場移転後1カ月以内に築地市場近辺を通る暫定迂回道路(片側1車線)を整備することでとりあえず全線開通させ、築地跡地を地下トンネルでくぐる本線(片側2車線)は2022年度に開通させる方針。

市場関係者の間では「開場当初1カ月は環2が使えず、晴海通りなどで渋滞が激化し、物流に支障が出るのではないか」(水産卸大手)と危惧する声は少なくない。その後も当分は片側1車線の暫定道路部分がボトルネック(隘路)となり、慢性的な渋滞が続きかねないとも指摘される。

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