ようやく開場する「豊洲新市場」の3つの難題 総投資約6000億円、関係者からは不安の声

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小池都知事は「築地は守る。豊洲を活かす」という聞こえのいいフレーズで両立を唱えているが、求められているのは具体的なビジョンと戦略である。

「今もって多くの関係者が納得していない」

さまざまな課題を抱える豊洲市場。現状では、予定どおりに開場することも100%確定的とは言えなくなっている。

9月19日、築地市場の水産仲卸業者とその家族ら56人が都を相手取り、豊洲への移転差し止めを求める仮処分を東京地方裁判所に申請。同時に移転差し止めを求める訴訟も提起した。記者会見した原告弁護団団長の宇都宮健児弁護士は、「土壌汚染問題が解決されておらず、食の安全・安心が確保されていない」と述べ、原告団の1人で築地女将さん会の山口タイ会長は「築地市場の移転は今もって多くの関係者が納得していない」と語った。

9月19日、都に対し豊洲への移転差し止め訴訟を提起した原告団(記者撮影)

原告側が強調するのは、都は豊洲移転の条件として土壌や地下水の汚染が環境基準を下回る「無害化」を約束したのに、それを反故にして移転を強行しようとしているということだ。

直近6月の地下水調査では汚染対策後で最大となる環境基準の170倍のベンゼンを検出。海抜1.8メートル以下で維持管理するとしていた地下水位も多くの観測井戸で達成できておらず、新たな盛り土が再汚染された疑いも出ている。加えて、豊洲では東日本大震災時に液状化による噴砂現象が多発しており、将来、首都圏で直下型大地震が発生すれば汚染物質が噴出し、地上の安全も脅かされると主張する。

最近でも盛り土部分の地盤沈下を原因としたひび割れが敷地内で露見。しかも都は昨年秋に確認していたのに「市場の使用に問題はない」として公表していなかった。都は開場認可翌日の9月11日に「あらかじめ報告すべきだった」と業者側に謝罪。あらためて点検を行うと、新たに10カ所のひび割れや段差が見つかった。

築地女将さん会が今年3~4月に水産仲卸業者の全535社を対象に行ったアンケート調査では、回答した261社の約7割が豊洲への移転中止・凍結を求めていたという。近年、豊洲への市場移転を前に廃業する仲卸業者も増えており、「仲卸の目利き力」を核とする築地ブランドの価値低下を嘆く声も聞かれる。

開場予定まで、もうわずかというタイミングではあるが、東京地裁はいつ、どのような判断を下すか。判断内容のいかんを問わず、今回の提訴は豊洲への移転に多くの課題が残されていることを物語っている。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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