結婚10年、37歳で離婚した女が受けた壮絶DV 長男の小児喘息発覚に「俺の子じゃねえ!」

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それでも、恵理子さんは懸命に結婚生活を維持しようと努力していた。毎食欠かさず食事を作り、家事も完璧にこなして夫の帰りを待った。しかし、前々から予兆のあった夫のDVが日に日にエスカレートしていく。

夜の11時過ぎに仕事から帰宅した夫の食事の準備をしていたら、激怒した夫にみそ汁を茶碗ごと投げつけられたこともあった。だからつねにビクビクしていた。

「おみそ汁って、少し時間が経つとお野菜がクタクタになってるじゃないですか。『こんなふにゃふにゃになりやがって!』って大声を出しながらたたきつけられた。ソファーに汁がしみていくら拭いても取れなくて、丸ごとゴミとして、捨てたこともある。スリッパがそろってないというだけでキレて、スリッパを投げつけてくる。暴力のきっかけが何で始まるか、本当にわからなかった」

ついに子どもにも平手打ちを食らわせるようになり、お通じが間に合わなかったという理由からグーパンチで殴るようになった。

「子どもたちってどうしても食べるのが遅くて、夫はいつもそれにムカムカしていた。『早く食べろよ!おっそいんだよ!』と言ってキレてはしを真っ二つによく折っていました。だから夫の休みの土日がとにかく恐怖でした。子どもたちが食べるのに遅いことに気づいた途端、夫が怒り出すんです。それ以降は、怖くなって、土日はわざと料理は作らずに、ピザを1枚取るようになりました。ピザなら、自分の好きなペースで食べられるから」

いちばんつらかったこと

しかし、恵理子さんがいちばんつらかったのは、長男がいくら苦しがっても、まるでそこに存在しないかのように扱うことだった。

長男が4歳の時、真夜中の2時ごろに、長男の部屋からコホンという声が聞こえてきた。その音は、ヒューヒューという苦しそうな音に変わっていく。息子は咳き込んでいるのに、聡はまったく気にしない様子でグーグーと寝入っていた。いつものことだった。

恵理子さんは、子ども病院に電話して、医師に病状を説明すると、すぐに病院に車で連れていくことになった。病院に着くと、いつものように長男は高酸素テントに入り、点滴が始まる。

症状が落ち着いてきたため、医師に「お母さんが看護師さんなら、点滴は自宅で外せばいい。もう帰っても大丈夫ですよ」と言われた。長男を抱えて車にS字フックで点滴を吊るして、朝6時前に帰宅した。

家のシャッターは閉まっていて、辺りの街灯は消えていた。家のチャイムをピンポンピンポンと何回も鳴らしても誰も出てこない。自分で鍵を開けて、長男を寝かしつけて、ベッドに入った。夫に目をやると、ベッドで口を開けて眠りこけている。なぜだか無性に悔しくて、涙が出てきた。1度あふれ出した感情は止まらなかった。

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