フランス人が親戚付き合いで疲弊しない理由 子にベタベタしないが「孫育て」には積極的

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知り合ったシニア世代には、子どもに過度に頼ったりしない代わりに、自分も好きなように生きるという気概が感じられた。フランスの子育てでは自立を重んじるが、年齢を重ねても自分に誇りを持ち、自分らしく暮らすことを大切にしているようだった。

一方で、働く母親が多いフランスでは、祖父母は子育て支援も担う。幼稚園・学校の授業が終わる夕方、孫を迎えに行って親が帰宅するまで面倒をみたり、長期休暇中に自宅で孫を預かったりする。フランスの幼稚園・学校は年5回も長期休暇があるので、働く親にとって祖父母は頼りになる存在なのだ。

「嫁へのプレッシャー」が小さいフランス

フランスでは、「嫁はこうあるべき」という周囲からのプレッシャーが、日本に比べ少ないとも感じる。フランス人の友人女性が夫の両親を夕食に招いた際、同席したことがある。義理の両親は到着するとまず、友人女性と互いにほおを寄せ合うビズというあいさつをした。食事の間中、双方ともよく話し、友人には「義理の両親の前では控えめにする」というような雰囲気はない。社会問題が話題になったときも、友人は堂々と自分の意見を述べていた。

実は、友人は野菜が苦手で、野菜料理はあまり作らない。義理の両親は「お宅はあまり野菜を食べないだろうから」と言って、野菜スティックなどの入った前菜をおみやげに持って来ていた。それが、まったく嫌味な感じはなく、友人も腹を立てている様子はなかった。義理の両親が「もっと子どもたちに野菜を食べさせないと」とか、「野菜を食べないと健康に悪い」などとお説教は言わず、さらりと前菜を渡したからだろう。

友人の家庭では、夫婦そろって料理をする。この日の夕食を作ったのは主に友人の夫だったが、義理の両親がそれをとがめることもなかった。前菜、メイン、デザートと料理をテーブルに運んだり、空いた皿を片づけたりの作業は夫婦と子どもで協力する。嫁だけが奮闘する食事会には、なっていなかった。

夕食は和やかに終わり、義理の両親と嫁の関係は平等という印象を受けた。お互いを個人として尊重し、ライフスタイルに干渉しない。適度な距離を保つことが、円満な関係を保つ秘訣と思えた。

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