スポーツ界のパワハラを「承認欲求」で読む 競技者だけでなく「指導者」にも光を当てよう
くり返しになるが、承認欲求はだれにも存在するものであり、それを満たそうとするのはむしろ自然なことである。しかも、いちど競技者として脚光を浴びた経験があれば「認められたい」という思いが強くなるのも理解できる。
アスリート・ファーストの前に指導者にも目を向けるべき
そこで、アマチュアスポーツの世界でも、指導者が正常な形で承認欲求を満たせるような環境を整えていくことが必要になる。
その際の前提として、指導者と選手とは上下関係ではなく対等な関係を目指すべきである。実際に高校野球や大学ラグビー、大学駅伝などでは、スパルタ式の指導から選手の自主性を尊重する方針に切り替え、チームの躍進につながったという例は多い。
そして指導者が組織の外でも認められるようにするためには、それぞれの競技団体がチームの指導者をもっと積極的に表彰したり、表舞台に登場する機会を与えたりすることが大切だろう。さらに優秀な指導者のスカウトが盛んになることも望ましい。
また指導者自身も、従来のように黒子に徹するのではなく、選手のパートナーとして前面に立とうとすればよいのではないか。箱根駅伝4連覇中の青山学院大学、原晋監督が選手とともに積極的にマスコミへ顔を出そうとしている姿に、心のなかでエールを送っている指導者は少なくないと思う。
ところで企業では近年、「CS」(顧客満足)と並んで「ES」(従業員満足)が重視されるようになっている。顧客に満足してもらうためには、顧客サービスに携わる従業員自身の満足度を高めることが必要だと認識されてきたからである。同じことはスポーツ界にも当てはまる。「アスリート・ファースト」を貫くには、選手を支える人々にも目を向けなければならない。
アマチュアスポーツの指導者がもっと認められるようになれば、単に暴力やパワハラの防止につながるだけでなく、優れた人材が指導者を目指すようになり、選手のレベルアップにもつながるはずだ。今回のパワハラ騒動を、指導者の置かれた立場を考え直すきっかけにしてもらいたい。
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