実は以前から存在した「大霧」のナゾ
PM2.5が問題視されるようになったのは、北京のアメリカ大使館が、2011年11月に敷地内で計測したデータをSNSで公開し始めてからのことです。その後、それを追認する形で中国政府も各地のPM2.5計測データを発表するようになりました。しかし、PM2.5は2011年に突如として出現したわけではありません。さらに、目視できない微小粒子であるPM2.5よりもサイズの大きな浮遊粒子状物質(PM10など)による健康被害も、以前から懸念されていました。
私の限られた経験の中でも、少なくとも7年以上前から、北京―天津間の高速道路は霧が発生しやすいので有名でした。加えて、天津の港や開発区と北京を往復する大型トラックが多く走行するため、当時の高速道路は交通事故が多発する危険な道として知られていました。
私も、前を行くタイヤのすり減った過積載のトラックが急ブレーキをかけたり、路肩に転落したクルマの残骸を見たりしてゾッとしたことを覚えています。当時、人々はそれを「大霧(ダーウー)」と呼んでいました。「高速道路天津線は今日は大霧のため閉鎖だから、電車で行きましょう」なんていう会話をしていたのです。しかし、その正体は自然現象の霧ではなく、人体組織の奥に吸入されしまう微細な汚染物質を含むスモッグだったのです。
ここまで進んでしまった環境汚染に、対策はあるのか?
この大気汚染をはじめとする中国の環境問題は、ありていに言えば「新興国の急速な経済発展に伴うコスト」なのでしょうが、それが歴史上、最大規模で起こっていて、その影響は地球規模であることを考えると、看過できるものではありません。中国経済がいつ失速するかというテーマも興味深いのですが、それよりも、経済が失速する前に、中国が環境改善への自助努力のペースを加速できるかのほうが、人類にとって重大なテーマであると痛感した北京出張でした。
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