この先どうなる?中国の「景気」と「空気」 北京で実感した経済成長と大気汚染の実態

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友人の車に乗り込み、次なる目的地「望京」地区(北京市郊外の住宅地で韓国系住民が多いが、近年、メルセデスやレノボなどグローバル企業のオフィスが増えて発展中)のレストランへ向かいます。が、ちょうど帰宅する買い物客の車が集中して道は大渋滞です。7年前は北京の片側4車線の広大な道路は、信号が少ないこともあって、車での移動は快適だったのですが、その後、年間100万台ペースで車が増えたので状況は一変、交通渋滞は日に日にひどくなっています。

巧みなレーンチェンジを繰り返す友人のドライビングテクニックに救われ、レストランには15分遅れで着きました。私との久々の再会を待ちわびていた国営企業の老板(ラオバン、企業オーナーや金持ちのこと)の友人たちは、1瓶数万円はくだらない高級白酒「貴州芽台酒(グイジョウマオタイジウ)」でもてなしてくれます。ここから先は「お約束」。私は簡単に潰され、食事が終わると彼らは麻雀へと移動します。おぼろげな記憶の中「せっかくナイキでウエアを買ったのに、このまま二日酔いになったら、明日朝、ジムで走るプランが台なしだ」などと考えながら、活気と喧騒に満ちた北京の土曜日が終わったのでした。

もはや異常事態の北京の空気

話はその土曜日の午前中にさかのぼります。北京市内・東三環路にある宿泊ホテル周辺を歩いていた私は、異常を察知しました。「空気が臭い!」のです。この異様な臭気は、例えて言えば鉛の臭いでしょうか。

7年半住んでいた際にはここまでの悪臭は感じませんでした。1カ月半東京の空気を吸って、その違いに気がつくようになったのか、あるいはこの1カ月半で北京の空気が急激に悪化したのかは定かではありませんが、こんな空気の中、人間が安全に暮らせる道理はありません。念のため、市内南側に住む友人にも聞いてみましたが、その辺りでも空気が臭いとのこと。市内全体がもやっていますから、広範囲に大気が汚染されていることがわかります。

報道で、10月19日、アメリカの人気R&B歌手パティ・オースティンのライブ公演が、本人がぜんそく発作を起こしたため中止になったこととか、10月21日黒竜江省のハルビン市(人口1100万人)でPM2.5が1立方メートル当たり1000マイクログラムを記録(WHOが定めた上限は25)し、視界が100メートルを切ったことなどは知っていましたが、空気にこんな異臭を感じるレベルだとは想像できませんでした。ちなみに、この「PM2.5が1000マイクログラム」のニュースはTime誌11月4日号にも大きく取り上げられており、もはや極東のローカルニュースではなくなっています。

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