不倫を「モラル」で断罪しないフランス人心理 「困ったこと」だけれど悪くはないという認識
時代は進んで2007年、国立図書館は「地獄図書展」という展覧会を開催し、地獄図書目録にある作品を16歳以上の観客に公開した。日本の春画も歌川国貞(うたがわ くにさだ)作『恋のやつふぢ』と勝川春章(かつかわ しゅんしょう)作『百慕々語(ひゃくぼがたり)』に加えて、下河辺拾水(しもこうべ しゅうすい)作の12枚組紅摺絵(べにずりえ)『欠題組物(けつだいくみもの)』が鳴り物入りで展示された。
また2014年には国立オルセー美術館が、フランス革命期のエロティック文学の最高峰でありながら19世紀には禁書とされた『悪徳の栄え』のマルキ・ド・サド侯爵(1740‐1814)没後200年を記念して、「サド侯爵展」を開催した。
ところでリベルタンを地でいったサド侯爵が生きたのは、1789年に起きたフランス革命とその直後、内ゲバの連続だった革命政府の「恐怖政治」の動乱期である。
サド侯爵は、後にナポレオンによってシャラントン精神病院に閉じ込められるのだが、その理由となった『ジュリエット物語あるいは悪徳の栄え(*5)』のあらすじは次のようなものだ。
なぜこんな作品がこの時代に生まれたのか
これまでに誰も書かなかった、いや、誰も直視したがらなかった人間の本性の闇をとことん暴いて見せたという点で、サド侯爵は、その後19世紀以降のボードレール、フロベール、ゴヤ、ドラクロワ、そしてシュルレアリストといった人々の文学、芸術、思想に大きな影響を与えた。
ただ、私が注目したいのは、このような作品がこの時代に生まれたことの意味である。
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