不倫を「モラル」で断罪しないフランス人心理

「困ったこと」だけれど悪くはないという認識

また、週刊誌『ポワン・ド・ヴュ』は、オランド元大統領のファーストレディだったトリユルヴァイレール氏が、保守派政治家D氏と愛人関係にあると報道した。だが、この話はまったくの事実無根で、既婚者で4人の子どものいるD氏は同誌を名誉毀損で訴えることとなる(*3)。

しかし、驚くべきことに2015年12月17日、最高裁判所は「不倫は40年前から刑法上の罪ではなくなっており、現代の風紀においては、特にモラルに反するとはいえない。だから不倫のうわさをたてられても名誉毀損にはならない」という判決を下し、D氏の訴えは棄却されたのである。

事実として、フランスは世界で最も不倫に寛容な国である。

フランスで不倫が刑法上の罪でなくなり、民法上の過失となったのは1975年。2001年からは「生まれてきた子どもに罪はない」として、不倫関係から生まれた子どもも嫡子(ちゃくし)と同じ権利をもつことになり、これを機会に不倫につきものの暗い影はなくなった。

嫡子であろうと非嫡子であろうと同じ権利をもつようになったのは公正だと思うが、一方で不倫による離婚訴訟では慰謝料請求もままならなくなった。

サド侯爵が暴いた近代社会の闇

近年では日本でも春画の展覧会が開催されるようになったが、フランスではこうしたポルノグラフィーを国立図書館や美術館で堂々と展示する。

危険な文書はフランス語で「地獄図書」〔注:1866~1876年、ピエール・ラルースの『ラルース大百科事典』(Grand Dictionnaire Universel du XIXe siècle)によれば、「地獄」は「危険な書物を閉じ込める場所」と定義されている〕と呼ばれるが、16世紀以来禁書となり王立図書館に保管されていた上記のような書籍は、1830年代の七月王政下で風紀を乱すとの理由から「地獄図書書庫」に分別された。

国立図書館は第二帝政下(1852~1870)で「地獄図書」目録を作成し、特別に許可を得た人々だけが、仕切りのある場所で閲覧することを許されるようになった(*4)。

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