また、肝心の電力供給についてはターミナル地下にあった送電用変電設備6基のうち、3基が浸水で故障したが、山谷佳之CEOは8日の会見で「いずれも部品の交換で対応できる状態」としているほか、連絡橋を通じて流れてくるガスや上水道の供給に無事を確認。さらに空港島内のゴミ焼却場や下水処理施設の再開にも目処がついていることから、とりあえずターミナル本体のライフラインの整備には光が見えていると言えそうだ。
気になるA滑走路の排水状況だが、8日の時点ですでに非常用電源が確保できたことから、それまでのポンプ車使用からモーターを使った排水を実施。KAPは「10日までに滑走路、誘導路、エプロン部分の排水と清掃は終わった」と明らかにしている。
しかし、9月14日がメドとされるT1の暫定運用開始時の規模については依然として誰にもわからない状況だ。9月8日の会見で山谷CEOは、「被害が少ないT1南部分(国際線)を先行で開けたい」という意向を示しているが、「空港内にあるさまざまな機器や設備のテストを同時に行なっている状況で、1時間ごとにいろいろな結果が上がってくる」のが現状とも説明している。
11日の時点で、駐機場(スポット)の復旧作業が着々と進んでおり、先行的に使用する予定のT1南部分とターミナル中央部にある国内線用のスポットはほぼすべて使える状況にあるというが、それ以外の施設や機器類の復旧の進展にも左右されるため、実際のところは「フタを開けてみないとわからない」というのが本音とみるべきだろう。
また、A滑走路の両端にあるILS(計器着陸装置)が故障しており、仮に14日ごろにT1の暫定運用にこぎ着けたとしても「当面はカテゴリー1での使用となる(ムノント共同CEO)」と説明している。
ちなみに「カテゴリー」とはILSの精度のことで、数字が大きいほど性能が上がり、天候が悪くても着陸ができる。関空のA滑走路は本来「カテゴリー2」で運用されて来たが、仮にカテゴリー1での着陸となると視界不良時には降りられないという問題も生じるわけだ。
鉄道は4週間で直るのか?
しかし関空の施設全体をフル稼働させるのに必要不可欠なのは本土側との交通アクセスの確保だ。
せっかく空港ターミナルがフル稼働のレベルに戻せたとしても、道路や鉄道の補修が進まなければ空港に行きたくても行けない、何かの都合で渋滞にはまって飛行機に乗れない、といった事態も想定される。T1の暫定運用を始めるにしても、一定の交通インフラの確保は不可欠だ。現在、りんくうタウン駅まではJRも南海も乗り入れており、そこからシャトルバスで空港島へ向かうようになっているが所要時間にはかなりの余裕をみる必要があるという。
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