狼少年の寓話のように、日本の原子力ムラは、国内の原子力発電所をすべて運転停止させたら、すぐに大変な事態に陥ってしまうと警告して評判を落としている。
事実、すべての原子炉の運転が止まっても、日本の国内総生産(GDP)は2012年に1.9%、13年の現時点においては年率4%で成長している。
原発の運転停止の影響はゆっくりと表れているものの、目に見えるほどの経済的な大惨事には至っていない。日本が原発なしで混乱を切り抜けつつあるという事実は、日本は原発ないし電力のさらなる大量供給を必要としないという印象を世界に与えている。
しかし、日本が一段の経済成長を目指すには、一層多くの電力が必要となるだろう。そして、今後5年内に原発以外の発電手段で必要なだけの電力を補うことは容易ではない。
そもそも、日本は過去数年間、どうやって原発なしに経済成長を成し遂げることができたのだろうか。
石油や液化天然ガス(LNG)、石炭の輸入量を増やし、従来の火力発電所をフル稼働することで対応してきたと報道されてきているが、実はこれは事実とは異なる。現実には、鉱物性燃料の輸入量を増やしているのではなく、電力の使用量を減らすことで対応しているのである。
鉱物性燃料の購入量を増やしているように見えるのは、燃料価格の上昇によるところが大きい。燃料価格の上昇の一因は昨秋以降の円安である。13年1~9月の鉱物性燃料の実質輸入量は、10年の水準をわずか6%ほど上回るだけだ。
しかも、実際の上昇率はそれより低い。まず、13年1~6月の数値、およびそこから導かれる7~9月の推計値によると、日本の実質GDPは10年から3.4%上昇している。次に、13年の燃料の輸入水準は1995年以降ほぼ20年間にわたる平均値と大きく変わらないことがわかる。
対して、石油、石炭、LNGの価格は10年から46%上昇。これは、08年に次ぐ記録的な上昇率だ。鉱物性燃料の輸入量は90年とほぼ変わらないにもかかわらず、費用負担で見ると、13年にはGDPの5.6%を占めるようになっている。過去を見ると、日本の輸入額が上昇したのは、第2次石油ショック直後の80年から82年にGDPの6.2%を占めたときだけである。
こういった多くの要因が私たちを混乱させている。日本はどうやって消費電力の3割以上を供給する原発を稼働させず(そのうえ、鉱物性燃料の輸入量も大幅に増やさず)、成長し続けることができたのだろうか。
理由の一つは、原発は消費電力の3割強を占めていたが、全エネルギーのわずか1割しか占めていなかったことである。たとえば、自動車は電力ではなく、石油をエネルギー源としている。また、消費電力量も不況前をはるかに下回る水準となっており、07年ほど多くのエネルギーを必要としていない。
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