景気が回復しても電力消費は低水準
もう一つの理由として、日本の電力使用の約3割を占める製造業の生産量が低水準にあることが挙げられる。9月時点で、工業生産は不況前の水準を16%下回っている。が、今後製造業の回復が鮮明になれば、電力需要が伸びると見込まれる。
90年代および00年代においては、ほとんどの間、電力消費量は実質GDPより伸び、世界的な景気後退が始まるちょうど前に当たる07年に、電力消費は過去最大となった。
景気後退当初は、GDPや工業生産の大幅な落ち込みにより電力消費も落ち込んだが、11年から13年にかけて、以前とは異なる大きな変化が見られた。電力消費は、景気が回復してからも落ち込んだままだったのだ。13年上半期の時点では、GDPが景気後退前の水準に回復したにもかかわらず、発電量は07年の水準をほぼ11%下回った。
GDP1円当たりの電力生産性の指標で見てみよう。00年を100とすると、80年から93年にかけての日本の電力原単位の平均はおよそ90。次に94年から10年にかけては、97まで上昇する。
ところが、11年の原発事故を経て13年の上半期に85まで落ち込み、ここ三十年来の低水準となっている。この結果の一部は、LED(発光ダイオード)など省エネ電気機器の利用といった電力消費の効率化によるものだが、主な要因は、実際の消費電力が減っていることだ。
たとえば夏場のエアコンの設定温度を上げるなどの節電努力が行われているが、玉のような汗をかき、暑さにやられ眠たくなってしまっている労働者が平常時のように生産的であることを想像するのは難しい。ほかにも、家庭内でほとんどの電気を消し、一つか二つの部屋に家族が集まるというものもある。
危機管理の施策や、「我慢」として知られる日本人の特性を利用して、不況や電力不足をしのぐことは悪いことではない。しかし、経済を本格的に成長させようというのであれば、電力のさらなる供給なくしてそれを成し遂げるのは難しいだろう。次回のコラムでは、この点について詳しく説明したい。
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