かつて若かった日本は急速に高齢化
ところで、ストックの蓄積と人口構成は、密接に関連している。
図に示すのは、65歳以上人口の比率だ。1960年、日本の比率は5.7%であり、図に示す他の国よりずっと低かった。日本はまさに高度成長を始めようとする若い国だったのだ。他方で、英国は、「英国病」に悩む老大国であった。
ところが、10年には、日本の比率は23%となり、他の国より高くなってしまった。この半世紀間に急速に高齢化したのである。いまや英国の比率も、日本よりかなり低い。人口が高齢化すれば、ストックの蓄積が進む。だから、日本がストック・リッチになったのは、自然な現象なのである。
図で明らかなように、日本と対照的なのが、米国である。10年において、米国の65歳以上人口比率は13.1%であり、日本の半分程度でしかない。米国は、若い国なのだ。
米国の経常収支は巨額の赤字である。これは、国内の投資が国内の貯蓄を超えていることを示している。投資とは、将来の消費のために現在の消費を犠牲にすることだ。これが多いのは若い国の特徴である。だから米国の経常収支が赤字になるのは、必ずしも不健全なことではない。米国の成長を人々が信じれば、資金流入は続き、金利高騰などの問題は起こらない。
それに対して、日本のように老齢化した国は、過去に蓄積した資産に依存すればよいのだ。
日本の高齢化は、今後も進む。国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計によれば、65歳以上人口の比率は、2060年頃に約40%という定常値に至るまで上昇する。定常状態では、0~14歳が10%、15~64歳が50%という構成になる。15~64歳の労働年齢人口1人に対して、それに依存する0~14歳と65歳以上人口の和が1という状況だ。こうした人口構成で経済活動を支えられるだろうか。歴史上このような国はなかったので、これからの日本は、人類初の実験に挑戦することになる。
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