金利の低下は、日本でも明確に見られる現象である。2ページに日本のデータを示す。なお、国債利回りについてこの期間をカバーする長期データが得られないので、ここでは長期金利として貸出約定平均金利(新規/総合/国内銀行)をとった。短期金利としては、無担保レート(月平均)をとった。
長期金利は、1993年の4%程度から96年の2%程度へと、約2%ポイント低下した。その後もほぼ継続的に低下している。短期金利は、90年代の初めには2.5%程度だったが、90年代前半に急低下し、95年9月以降は0.5%を超えていない。
80年代後半以降に金利が顕著に低下したというのは、前号で見た米国の場合と同じである。いかなる原因でこうなったのか?
フィッシャー方程式(名目金利=実質金利+期待物価上昇率)において、実質金利が実質成長率に等しいとし、期待物価上昇率として現実の消費者物価上昇率をとると、名目金利に影響を与えるのは、実質成長率と物価上昇率だ(正確には後で述べるようにリスクプレミアムが影響する)。ところで日本の実質成長率は90年代以降、0%から1%程度の間で変動しており、趨勢的な変化は見られない。他方、消費者物価上昇率と金融政策は大きく変化した。だから、これらが金利低下の基本的な原因だ。
90年代前半の急激な金利低下は、消費者物価の低下を反映している。消費者物価指数の対前年同月比は93年には2%程度であったが、96年にはゼロないし若干のマイナスとなった。つまりこの間に約2%ポイント低下した。これは先に見た長期金利の低下幅にほぼ対応している(詳しく見ると、96年頃の消費者物価上昇は短期金利には反映しているが、長期金利には反映していない。なお、2006年頃に金利が上がったのは、消費者物価が上昇したからだ)。
これは、90年代に新興国が工業製品を安く供給するようになったために生じた現象だ。この変化は元には戻らない。だから、長期金利は80年代以前の水準には戻らない。
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