「出産年齢」がアメリカ女性を分断したワケ 第1子を出産する年齢に地域で大きな差
一方でこうした女性が、子どもの祖父母の近くに住んでいる率は低い。また、親の年齢が高いことから育児と高齢者介護の両方を担わなければならないケースもある。また、30歳代になると女性の妊娠率が低くなるため、希望した人数よりも実際の子どもの数が少ないこともあるかもしれない。
サンフランシスコに住むエレン・スキャンロンは3カ月前、40歳で初めての子どもを出産した。彼女は経営大学院を卒業した後に金融業界でキャリアを積み、戦略コンサルティング会社を立ち上げた。現在の夫と知り合ったのは31歳のときだったが、急いで家庭を作ろうとは2人とも思わなかった。
36歳で結婚してから3年半不妊治療
「ただとても楽しいときを過ごしていただけ。2人とも旅行が好きで、お互いに出会えたことがとても幸せだった。子どもなんて欲しくなったらいつでも産めると信じていたのだと思う」とスキャンロンは言う。
だが36歳で結婚した後、2人は不妊に悩むことになった。3年半にわたる治療を経て、スキャンロンは人工授精で妊娠した。
キャリアを積み上げていたおかげで、不妊治療や出産のために柔軟に休みが取れたと彼女は言う。「復帰はそれほど大変ではないだろうと安心していられる」。
また、そのおかげでスキャンロンにしても金融業界で働く夫にしても、子どもの大学進学資金の積み立てを始めたり、子どもを私立学校に通わせたり、旅行に連れていくだけの金銭的余裕がある。「いろんなところに連れていって、世界は広いということを見せてやりたい」と彼女は言う。
若いうちに第1子を出産した女性の多くは家族の絆を何より大切に考える土地に暮らしている。女性も子どもの父親も若いから健康だろうし、子どもたちの祖父母も若く、近くに住んでいることが多い。
だが女性も子どもの父親も大した貯金はなく、大卒でもなく、仕事のキャリアを積んでいるとは言えないケースが少なくない。妊娠自体が予定外であることが多く、25歳未満で第1子を出産する女性の4人に3人は結婚していない。
ナタリア・マーニはテキサス州リオグランデシティにあるスター郡病院の産科医だ。この地域の女性が第1子を出産する平均年齢は22歳で、マーニが診ている妊婦のうち、既婚者はほんの一部にすぎないという。避妊にかかる費用すら出せない人も多い。中絶を考える人はほとんどいないし、そもそも中絶ができる医療機関が近くにない。おまけに若いうちから家庭を持つことが当たり前という文化がある。