「出産年齢」がアメリカ女性を分断したワケ 第1子を出産する年齢に地域で大きな差

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「こうした学歴の違いは格差の拡大に寄与している。なぜなら教育水準の高い女性は子作りを遅らせることでランクアップを図っているのだから」と語るのは、サウスカロライナ大学教養学部で家族問題を研究するキャロライン・ハートネット准教授だ。

「だが大学に進学して中の上の暮らしを手にするなんて夢のまた夢だと思う人にとっては、家庭を持つことが最も手っ取り早く自分に存在意義を与えてくれる手段に思えるかもしれない」

子どもを持った年齢で性格に違いが?

第1子の出産年齢の違いは、女性の役割に関する考え方の違いとも軌を一にする。

法学者のジューン・カーボーンとナオミ・カーンは2010年に刊行された本の中で、若くして母になった女性は保守的で信心深く、昔からの男女の役割分担を重視し、人工妊娠中絶を否定する傾向がある一方、高齢出産した女性はリベラルで、生活費を稼いだり子どもの世話をする責任を男性とより公平に分け合う傾向があったと分析している。

「若くして子どもを持つ人が多い地域では、幸福度が低いわけではないけれど、経済的な意味で男女格差が大きい」と、メリーランド大学社会学部で家族と社会格差の問題を研究するフィリップ・コーエン教授は言う。

現代人が親になる年齢は全般的に上がりつつある。アメリカで女性が第1子を出産する平均年齢は1972年には21歳だったが、現在では26歳だ(男性が父になる年齢も27歳から31歳に上がっている)。ほかの先進国でも同様の傾向は見られ、スイスや日本、スペイン、イタリア、韓国では第1子の出産年齢の平均は31歳だ。

とは言え、子を持つ女性の生活の様子は同じアメリカの中でも大きく異なる。

「35歳未満で子どもを産む人なんてここにはいないような感じだ」と語るのは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のメアリー・ノートン教授(産婦人科)は言う。不妊治療や遺伝子検査のおかげで、35歳を過ぎた妊娠・出産に関する健康上の不安も悪いイメージも以前ほどではなくなっているとノートンは言う。

そのくらいの年齢になれば両親ともに1つかそれ以上の学位を取得していることが多いし、子どもの教育資金について計画を立てていることも多い。妊娠・出産をすると女性は収入面でかなり不利になるから、その前にキャリアを積み上げておこうとする女性は多い。また、高齢出産する女性は若くして母になる女性に比べて結婚している率が高く、離婚する率も低い。

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