「出産年齢」がアメリカ女性を分断したワケ 第1子を出産する年齢に地域で大きな差

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第1子を産む年齢が居住地域と教育水準で大きく左右されるという。その理由とは?(写真:Milkos / iStock)

かつて母親になることは、アメリカの女性たちをつなぐ大きな人生の節目だった。だが過去40年にわたる出生データを基にした最新の分析から見えてきたのは、女性が第1子を産む年齢は居住地域と教育水準によって大きく左右されるということだ。その結果、アメリカの子どもたちが育つ家庭環境に大きな差が生じているだけではない。それは将来の経済格差の源にもなっている。

地域により10歳以上の差が

第1子を出産する年齢は大都市や太平洋および大西洋沿岸地域では高く、農村部やグレートプレーンズ(ロッキー山脈東側の大平原地帯)、南部では低い傾向があった。平均年齢で見ると、ニューヨークでは31歳でサンフランシスコでは32歳だったのに対し、サウスダコタ州トッド郡では20歳でテキサス州ザパタ郡では21歳だった。

この分析はニューヨーク・タイムズの委託でミドルバリー大学経済学部のケイトリン・マイヤーズ准教授(専門は出生政策)が行ったもので、アメリカ保健統計センターのデータを使い、1980年以降のアメリカ内の出生証明のほぼすべて(1985年以降はすべて)を対象としている。

第1子の出産年齢の違いは、アメリカ社会を分断するさまざまな要因と重なる部分があるが、なかでも大きいのが教育だ。大卒の女性が第1子を出産する年齢の平均は、大学を出ていない女性と比べて7歳高い。この間に学業を修めキャリアを積み、高収入への道を作るわけだ。

社会経済的な立場の高い人々には「親になること以外に大学や大学院に通ったりキャリアを構築するなどさまざまな選択肢がある」と、ルイジアナ州立大学社会学部のヘザー・ラキン准教授は言う。「(だが)費用の問題で、社会経済的立場の低い人々はそうした選択肢に恵まれないかもしれない。一方、母になることには、感情的に満たされ、コミュニティ内部での立場が認められ、大人になる道が開けるという利点がある」。

専門家たちに言わせれば、第1子の出産年齢の違いからはアメリカの格差問題が見えてくる。経済的な階層を上がっていくのが以前より困難になるなかで、母親が置かれた環境の違いが子どもたちの未来に及ぼす影響も大きくなっているというわけだ。

大卒でなければ中流階級の賃金を得ることは難しくなっている。子どもを持つのが遅ければ、その分バイオリンのレッスン費や数学の家庭教師代や進学費用を稼いで貯める時間は十分にあり、子どもたちにさまざまな選択肢を与えることができる。だが多くの人にとっては、学歴も高給がもらえる仕事も手の届かないものだ。

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