つまり、福利厚生が充実している会社とは、社員に対する愛情表現をわかりやすく制度や取り組みとして伝えることができている会社、ということになる。
今回は、企業の社員に対する愛情表現としての福利厚生の事例、昨今の人事制度のトレンドについて、人事コンサルティングの専門家であるベクトルの秋山輝之さんに話を伺った。
――なぜ会社は福利厚生を積極的に導入するのでしょうか。
福利厚生を導入する狙いは、社員にわかりやすく「会社はあなたのことを大事にしますよ」という想いを伝え、生活を支えることです。
一見すると、「A:収入」としての福利厚生であれば給料を上げればよく、わざわざ面倒な福利厚生制度を作る必要はないように思われます。しかし、愛情はあることも重要ですが、それ以上に伝わることが重要です。給料と分けて手当という形で支給するほうが、社員に会社からの愛情が伝わりやすいから分けているのです。
手当以外にもさまざまな取り組みが、従業員へ愛情を伝えるという視点から行われています。具体的に、どのような取り組みが近年のトレンドなのか、代表的なものを紹介しましょう。
手当や取り組みは会社からの愛情が伝わりやすい
これらの取り組みではニュービジネス(ベンチャー企業や若い社員が多い小規模の会社)の方が導入しやすい傾向にあります。それに対して、オールドビジネス(昔ながらの中小企業、年配層が多い会社)にも手厚い福利厚生制度があるのですが、分かりにくかったり、昔の価値観に基づくものであったりして、新しい取り組みは導入されづらい傾向があります。
――「愛情表現」の手法としてどんなものがあるのでしょうか。
福利厚生もそうですが、報酬や評価といった人事制度でも、いかに社員に対する愛情を伝えるかという視点から、見直しがすすめられています。最近のトレンドをまとめると次の3つに集約されます。
1. ちょっとした成長に対しても、小刻みに昇給
これは評価制度に関するトレンドとして、昇給額を小さくすることで昇給の回数を増やす施策です。給料の上がり幅が大きいと、誰だって嬉しいものです。ただ、その嬉しさは昇給額に対してそこまで比例しないことがわかっています。(1万円の昇給と10万円の昇給の場合、嬉しさが10倍になるわけではない)
無料会員登録はこちら
ログインはこちら