狂気なほど金持ちアジア人に全米が沸くワケ 「クレイジー・リッチ!」大ヒットの内幕
たとえば、アメリカに移民したアジア系アメリカ人と、本国に残り家柄に誇りを持つ一族との違い。根無し草でも成功できる自由なアメリカと、個人より一族の歴史を重んじる生き方が対比される。アジア人であるだけでニックの家族も白人から差別的な扱いを受けることが映画の冒頭で出てくるが、そのアジア人の間でも差別や区別があるのだ。
ニックが話す英語にも注目されたい。完璧なブリティシュ・イングリッシュである。アジアの富豪は子どもたちを小さい頃から全寮制学校へ留学させることが多く、お金のある順番からイギリス、カナダ・アメリカ、オーストラリア・ニュージーランドとなると聞いたことがある。シンガポールでも地元で学んだ人々の英語はなまりの強い「シングリッシュ」と呼ばれるが、この映画にはシングリッシュを話す人物が1人も出てこない。そんな設定も前提になっている。
アジア系の俳優が人気映画に出ていることは少ない
そして、オールアジアン・キャストになっていることもポイントだ。日本からは見えにくいのだが、こうした人種ものはアメリカでは重要な映画のジャンルに属しているのだ。
人種ものと言えば、アフリカ系アメリカ人やイタリア系アメリカ人、あるいはユダヤ系アメリカ人ばかりが出てくる映画は少なくない。家族や友人たちの様子が詳細に描かれ、それだけで一定の観客を引き寄せる。そんな中で、これまでオールアジアン・キャストの映画は多くなかったのだ。
従来、ハリウッド映画でアジア人俳優が登場するとなれば、そのキャラクターはかなりのステレオタイプだった。空手をやる、見かけも悪くコミカル、あるいは美しくミステリアス、といったところだ。多くの白人俳優が出演する中でアジア人に割り当てられる役柄にはバリエーションがなかったのだ。
実際、南カリフォルニア大学の調査によると、人気映画におけるアジア人俳優比率は5%以下で、3本のうち1本はまったくアジア人が出ていない。また、アジア系アメリカ人の監督はたったの4%、女性となるとほぼいないことがわかった。
こうした中、『クレイジー・リッチ!』ではアジア人ばかりが登場することで、もっとダイナミックな人間像が登場人物それぞれに描き出されている。オールアジアン・キャストの映画は、1993年に公開された『ジョイ・ラック・クラブ』以来のこと。本当のアジア人を伝えるのに重要な一作とされる。
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