引き出しはひとつ「人間を描くこと」
――三谷さんは、舞台も映画もテレビもいろいろやられていますが、ご自身では何がいちばん面白いと感じていますか? たとえば「肩書きは何ですか?」という質問にはなんと答えますか?
肩書きは「喜劇作家」です。僕の基本で、そこに戻る気がしています。コメディとして考えるといちばんのベストは舞台です。やはりライブ。お客さんの笑いを感じながら、そこで俳優さんと一緒に作っていくもの。それがいちばんいいと思うのですが、でもライブは残らないんですよね。もちろん残らないよさもあります。映画のコメディというのは、100年後や200年後の人たちも笑わせることができるもの。僕だって、60~70年前のハリウッド映画を見て笑いますからね。それはすごいことだと思いますし、そんな映画を作りたい。
ただ、基本的に僕はいろいろなことをやっていますが、引き出しはひとつしかないと思っています。映画もテレビも、小説は今後やるかどうかはわからないですが、技術的には多少の違いはあっても、僕の持っているものはひとつだけ。結局は人間を描くことだと思う。人間が追い詰められたときにすごい力を発揮するとか、思いもよらぬことをやってしまうとか。そして彼らの持っているけなげさや愚かさ、おかしさみたいなものを描くことしか僕はやっていない。だからいろいろなことをやっていますねと言われますが、僕としてはあまりいろいろなことをやっているイメージはない。これでレーサーもやって、畑仕事もやってとなると、マルチな感じになるんでしょうけどね。
(撮影:大澤 誠)
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