――映画作りでは会議は多いのはないでしょうか?
そうですね。たとえばスタッフの皆さんと、このシーンはどういうふうにするかといった会議はありますし、次はどんなものを作ろうかということで、プロデューサーとの打ち合わせも当然あります。ただ僕はせっかちなので、よどんだ空気で、会議が滞ることがものすごく嫌です。僕が先導できるときはそういうことがないように、10分くらいでパパッと決めて「じゃあ、お疲れさまでした」というようなものを理想としています。
――もし長引きそうな会議に遭遇してしまったときには、どのようにして突破しますか?
会議というのは、相手をどう説得するかという説得術になってくると思うのです。僕はそういう、人を説得するようなことが得意なのです。たとえば昔、劇団をやっていたときに、劇団のチラシの連絡先の電話番号を間違えてしまったことがありました。しかもそれがどうもヤクザらしき事務所で。そこに僕は謝りに行きました。そういうのを上手く穏便に収めるのが得意なのです。だから僕は外務大臣になりたいと言い続けています。そういう交渉ごとはものすごくうまいと思うのです。
秀吉の人心掌握術
――相手を説得するコツはあるのですか?
自分が心掛けているのは、説得するときに相手が何を望んでいるのかを知るということ。そこをきちんと理解できていないと、絶対に説得はできません。まずは相手の側に立つというか、相手が何を望んでいるのかがわかれば、可能なかぎり、かなえられることはかなえたいと思います。やはりそこからだと思うので、そういう意味での下調べとか、事前の調査は必要だと思うのです。
秀吉もたぶんそうだったと思う。丹羽長秀や池田恒興が何を欲しているかわかっているからこそ、それを提示することで仲間に引き入れることができる。柴田勝家は何も考えていなかった。それに尽きるのではないでしょうか。
――確かに秀吉は、「自分が天下を取った暁には、お前にはこれをやる」といった対価を提示していました。交渉術に長けた人物に描かれていましたね。
長秀は自分に負い目があるんですよ。本能寺の変のときに、京都にいたにもかかわらず、明智光秀を討つこともできずに秀吉が来るのを待っていたという最大の負い目が。秀吉はちゃんとわかっているから、それも帳消しにしますよと言うんですよね。映画ではカットしてしまいましたが、領地配分のときにも長秀を立ててあげた。長秀が何をされると喜ぶのか、全部わかったうえで交渉している。やはりそれは説得の基本のような気がしますね。
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