外科手術を刷新する「ロボット革命」の全貌

米国では前立腺手術の85%でロボットが活躍

前立腺摘出術におけるダヴィンチの貢献はすさまじかった。ダヴィンチを使って標準的なレベルで前立腺摘出術を行えるようになるには、約20例程度で十分とされている。その容易さから、泌尿器の手術でのダヴィンチの使用が急速に広まった。

アメリカでは現在、前立腺摘出術の約85%でダヴィンチが用いられている。今ではアメリカ以外の各国でも、産婦人科など外科以外の手術にも使われている。

心臓手術の方法も激変した

ダヴィンチのような内視鏡を用いた手術は、比較的容易な領域から広まり、呼吸器内科、消化器外科の領域で胆嚢(たんのう)摘出術や胆石、胃切除などが実施されるようになってきた。

だが、通常手術に慣れた外科医にとっては、2次元の内視鏡手術でさえハードルが高いのが現状だ。大きな傷をつける手術をいまだに行う外科医も少なくない。

心臓手術は、開胸器で胸の真ん中を縦に大きく20センチ以上も切開し、骨を切断して心臓の全体を見ながら手術を行うのが通例だった。25年前の1993年頃には、肋(あばら)の間を小さく開胸する手術が発表された。

その後一部の外科医、一部の施設では小切開手術によってバイパス手術、並びに弁膜症の手術が行われてきた。

小切開手術は、胸骨を真ん中に大きく切る手術に比べて回復が早く、出血量も少なく痛みもない。回復にこれまで2カ月かかっていたのに、小切開手術ならほぼ2週間で身体を動かせるようになる。かつ、大きな感染の危険がない。

だが、小さい視野からの手術であるため、すべての外科医ができるわけではない。そのため、ごく一部の外科医が経験を積むに従ってうまくできるようになるしかなかった。よって、この術式はいまだ広まっていない。

また、小切開手術であっても7センチ程度切開し、肋骨の間を開き、血管や神経、そして肋骨を切ることになる。手術が行われる心臓の患部に到達するまで患者さんに負担を強いることになり、体に与える影響は大きいものがある。患者さんが回復するまでに相当な時間がかかることは想像に難くない。

ここで内視鏡手術の出番となる。心臓の手術では主に、血管をつなぎ直したり、弁を修復したりする。がんなどとは違い、病巣を取り除いて終了するだけではない。心臓における内視鏡手術は、2次元の画像と2本の不自由な鉗子で到底できるものではないのだ。

従来の2次元内視鏡では心臓手術は対応できず、しかも鉗子が非常に不自由なために細かい操作ができないという欠点があった。ダヴィンチでは身体の深部に迫って細かい手術が容易にできるため、この欠点が克服できる。

完全に内視鏡だけで手術ができる――。患者さんにとっても手術する医師にとっても、何事にも代え難い大きな利点を持っているのが、ダヴィンチの強みなのだ。

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