第一人者が語る、がん「個別化医療」の将来像

中村祐輔氏が始める新プロジェクトとは?

中村祐輔・がんプレシジョン医療プロジェクト理事長は、がん治療の現状に強い問題意識を持っている(撮影:尾形文繁)
今年7月、中村祐輔氏が6年間の米シカゴ大学での研究に区切りをつけて帰国し、公益財団法人がん研究会がんプレシジョン医療研究センター所長として着任した。同時に「がんプレシジョン医療プロジェクト」を立ち上げ、理事長に就任した。
中村理事長はがん遺伝子・がん免疫に着目した研究で世界のトップランナーの1人。日本のがん治療は標準治療が主流だが、患者に合わせた「個別化」を進め、変革を起こそうとしている。プロジェクトをどう舵取りするのか。中村理事長に聞いた。

個人の患者さんに目が向いていない

――中村先生は日本のがん個別化医療の提唱者ですね。いつごろからこのアイデアを持っていたのですか?

1996年ごろから「オーダーメ―ド医療」という言葉を使っていた。患者さん1人ひとりに合った、患者が望んでいる医療を提供する必要性を感じたからだ。「テーラーメ―ド医療」と呼ぶ人もいるが、医療側から見たような言葉で、私は好きではない。

今のがん治療はガイドラインに沿って行う標準治療が主流になっているが、標準治療にはいくつか問題がある。1つは、限られた割合の患者さんにしか効かないということ。しかもまずA薬、それが効かなければB薬、その次にC薬と、投与する順番や投与量まで画一的に決められている。集団主義で、個人の患者さんに目が向いていない。

がん患者さんによって、薬を分解する速さも、遺伝子異常のパターンも異なる。集団として見た場合に3割に効く薬はいいものかもしれないが、患者個人としてみれば、効かない治療を受け、悪化してから、あるいは副作用で弱ってから、免疫チェックポイント阻害剤のような免疫治療を受ける形になっている。そうでないと保険適用されないからだ。

ゲノムというツールを使いこなして、できるかぎり個々の患者さんに合った治療をどう提供していくのかを考えないといけない。

別の課題として、標準治療が終わった後にどうするか、がある。再発してひととおり標準治療が終わってしまったら、治験(医薬品開発のため人に対して行う試験)にエントリーできないかぎり、患者さんは病院に救いを求められない。

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