GAFAの躍進を支えるリバタリアン思想の正体 自由至上主義者のユートピアが現出した

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本書の読みどころの1つは、教授が取締役を務めたニューヨーク・タイムズとグーグルとの戦いだ。戦いというよりは自然な成り行きとも言えるが、旧世界のタイムズの経営陣は、自社サイトで稼ぐのでなく、無邪気にもグーグルからの無制限のアクセスを許した。その結果、タイムズは、インターネットという広大な土地の領主であるグーグルの小作人になり下がってしまったという。

タイムズはもはや、たとえばアメリカ大統領選に大きな影響力を持つことはできなくなってしまった。アメリカの多数の有権者が彼らの社説は読まず、タイムズが嫌うトランプのツイッターをフォローする。かつて、重要なことは新聞が決めていた。買うべきものは雑誌が決めていた。だが最後に新聞の社説を読んだのはいつだったろう……?

ギャロウェイ教授は、グーグルとフェイスブックは既存のメディアをも大きく上回る発信力と広告収入を持ちながら、メディアではなくプラットフォームだと主張し、「真実を追求するジャーナリズム精神など持ち合わせず」無責任にフェイクニュースを垂れ流すという。リバタリアンの新世界では、個人がそれぞれに真実を追求する責任を負う。グーグルは、タイムズのご高説はもうたくさんだというユーザーの本音に忠実に従う。

今日私たちが日々頭を垂れるのは祈るときではなく、スマホに向かってグーグルで検索するときだと、教授は指摘する。リバタリアンのユートピアで、人は信じることではなく、知ることで神に近づけると気づくからだ。

弱肉強食の冷酷な世界

第2に「英雄礼賛文化」である。リバタリアンの世界では、卓越したアイデアと才能・実行力を持つ個人は英雄として崇められる一方で、中途半端なサービス、二流の商品が生きながらえることはない。そこで勝つとは、誰よりも早く、未開発の市場を思いつき、独占すること。安定ではなくディスラプション、統制のとれた集団ではなく才能のある個人が絶え間ないイノベーションによって理想世界を実現する。それは結果がすべての弱肉強食の冷酷な世界でもある。

思えば「世界最大のお店」とか「世界中の人をつなげるアプリ」とか「全知全能の検索エンジン」など、GAFAの発想は荒唐無稽だった。だがスーパーヒーローたる起業家たちは、ビジョンの大きさにひるむことがない。ギャロウェイ教授によれば、大抵の経営者は最小の資本で最大のリターンを目指す。だがアマゾンの発想は違う。「莫大な資金がかかるために他社にはできないことで、われわれが他者を出し抜けることは何だろうか?」そして、その荒唐無稽なビジョンに賭ける投資家たちがいる。フェイスブックは、誰もが気づいていない真実を探し続けた逆張りの投資家ピーター・ティールによって最初の資金を得ることができた。

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